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アベノミクスのメッキは剥げ、自分たちの生活で精一杯の家族は患者を引き取れず、病院任せになる。看護師らは「まるで姥捨山状態だ」と途方にくれる。より深刻さを増す人手不足問題や入院期間短縮化と在宅化が急速に政策的に推進される中で、そのひずみをもろにかぶっている看護の現場。そして劣悪な環境に置かれた患者の実態。看護の最前線で起こっているのはどんなことか。多職種によるチーム医療に取り組む好例なども交えたルポルタージュ。

夜勤帯の看護師不足

深夜、ナースコールやアラーム音が鳴り響く病棟で急変が重なり、道子さんは思わず叫んだ。夜勤のペアの介護職が「点滴がなくなった」と教えに来てくれたが、道子さんは今にも痰を詰まらせそうな患者の痰の吸引に追われていた。息つく間もなく、今後は違う患者が急変した。夜勤は看護師が足りず、准看護師と介護職で二人ペアを組んでることが多い。介護職は医療行為ができないため、実質、看護職の一人夜勤で患者四〇人を看ていることとになり、処置で目まぐるしく、点滴どころではなかったのだ。

夜間に当直する医師は、常時一人で急変が相次ぐと誰を優先させるかが問題となりパニック状態に。業務の多忙さに加え看護師は病院内でハラスメントを受けることも多い。不穏(精神などが不安定な状態)の患者から酷い暴力を振るわれたり、杖で殴られたり、髪を引っ張られたり、噛みつき、引っ掻き、唾を吐き捨てられるなどは日常茶飯事。大変劣悪な仕事場ゆえ夜勤帯を経験後の離職者が後を絶たない。

患者の経済力によって受けられる医療行為が変わる

セレブが多く住む住宅街の病院では高額な個室料が取れるので病院にとってはかっこうの収入源となり差額ベット料として一日数万円もとっている。差額ベット料の一番高い個室には〝VIP〟が入院してる。僕が入院してたのは精神科だが一番大きな個室(入ったことはないがシャワーなども完備していて他の患者と一緒に入らなくても済む)には写真集が話題を呼んだ某芸能人が摂食障害で入院していたと噂になっていた。

在宅での看取りは現実的ではない

最初は在宅で看取りをしようと思っても、経験がなく家族も不安が募って迷いが生じる。SpO2(動脈血酸素飽和度)の数値が低下しても自分では気づかず、息が苦しくても「こんなものだ」と我慢し、本人は「苦しくない」と言う。家族は死期が近づいても症状が出ないことでストレスを感じて不安が高まり、「やっぱり入院させて欲しい」と願い出ることになる。

実際にもこういった例も多く、家で看取りたいといったニーズはあるが、実際、急変した時に対応できないなどの理由により病院に任せることになる。僕の祖母の例だが、認知症でグループホームに入所していたが、急変したり死期が近づいたと判断される患者は置いてはおけない。結局最後は病院にお世話になるしかないのだ。

真のチーム医療とは何か

以前は、多くの先天性心疾患のある赤ちゃんは生まれた後で見つかり、十分な治療ができないまま命を落とすことも多かった。しかし、現在では、超音波検査の技術が普及し、より高度になり、胎児のうちに疾患を見つけることができるようになった。それにより、産科と小児科が連携することによって、産後すぐに治療を進めることが可能になってきた。

胎児のうちに、もしくは生まれてすぐ疾患があることがわかると家族の心配は計り知れない。そこで臨床心理士と連携し家族の不安を和らげる。加えて理学療法士(PT)によるリハビリや臨床工学士(ME)、栄養士、作業療法士(OT)、言語聴覚士などの職種との連携も行われている。作業療法は僕の入院中にもOTの時間というのがありお世話になったので馴染み深いが、一人の入院患者に多くの人たちが関わって回復へと導いてくれるのはありがたいことだ。

ICTを利用した情報の共有

ソフト会社と共同開発した、クラウド型地域医療支援システム「EIR」を活用することによって、iPhoneやiPad、Android端末、通常の携帯電話でも利用できるようなシステムを構築した。診療記録、患者の基本情報、処方箋の記録、病歴情報などが一人ずつファイルにまとめられ、いつでも閲覧でき、どこにいても情報を書き換えられる。臨時の往診の連絡があってすぐに行かなくてはならない時、患者の住所情報も入っているため、それが地図で表示される機能もある。

僕の通う精神科も十数年前かかった頃には、まだ手書きのカルテだったが、今ではPCによる入力となている。最初のうちはPCが苦手な精神科医もいたが今ではすっかり浸透している。

後半では〝あるべき看護の姿〟が論じられており。理想と現実のギャップがまだまだあるように感じた。医療の現場のみならず、保育の現場でも慢性的な人不足が騒がれる中、国はどういった対策をとるのか。また高齢者が増え明らかに医師の不足が懸念される中、医師の育成は減少傾向にあるという。◯◯不足と言うのはこれからの社会での必須課題だと感じる。