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他人を助けること。それは回り回って自分を助けることになる。その最高の方法は自分の仕事に専念すること。一世紀も変わらぬメッセージ。

ひとりだけの力

銀行は金でふくれ上がっていて、いたるところに仕事を探している人がいて、作物は十分に実っている。だが、失業者をうまく統率して資本金を上手に利用する《能力》が人々には欠けている。ひどく欠けている。どの街でも、年収五万ドルのポジションはたくさんあり、そこは常にふさがっている。必要なのは週に十五ドル稼げる仕事を欲しがっている人々の職場である。《能力》のある人はすでに仕事を持っている。《能力》というのは希少価値のある力である。だが、もっと希少で、ずっと素晴らしいものがこの世にはある。《能力》よりさらに希少なもの。それは「《能力》を受け入れる能力」である。知識階級の雇用者に対してよく言われる、こんな手厳しいコメントがある。 「《能力》のある人間はボスをものともせず、彼からの手助け、励ましなどなくても、自分の力を発揮できる」 《能力》のある人間のライフスタイルを知ると、みな例外なく機会、あるいは偶然に恵まれ、自分に力のあることを発見していたことに気づく。そんな機会をつくってくれた偶然がなければ、その人は自分の力を知らないまま、文字どおり路頭に迷っていただろう。ある 辺鄙 な小さな駅に勤めていた通信技師トム・ポッターはまさにそのよい例である。

本当に能力のある人はボスが有能であろうと無能であろうと力を発揮する。なんなら自分自身がボスである起業したってうまくいく。ここの能力がこんなにも高まった時代、そしてそれが評価される時代は過去にもあったがそれはどれも混沌とした時代だった。時代背景が揺らいでいる時代にこそ個々の能力が評価されるのだ。

夢を見過ぎない

素晴らしい仕事につくための法則に、「その過程で重要ではない仕事も数多くこなさなくてはならない」という必須条件がある。たどり着くところが何であるかは誰にもわからない──ただ私たちは封印された指図書に従って航海するだけである。今の仕事に打ち込みなさい。できるかぎり最善を尽くし、一日一日を大切に暮らすように。この課業が成し遂げられる人は、神から与えられた力を温存することができる。その力をいたずらに使って細い 蜘蛛 の糸を紡ぎ出すこともない。そのようなか細い糸は、無情な 運命の女神 によっていとも簡単に払いのけられるだろうし。今日の仕事をていねいにすることは、必ず明日のもっと素晴らしいことへの準備となる。過去は私たちのもとから永久に去っていき、未来にはまだ手が届かない。現在だけが私たちのものだ。日々の仕事は次の日の務めのための準備である。今を生きなさい──今日は、ここにしかない。大事なときは今なのだ。心から願わなくてはならないことはただひとつ。今が進化を遂げる順番を待つ準備段階でありますように、ということだ。

やりたい仕事、理想の仕事の裏側には地道だったり、その過程で重要ではない雑務もあったりする。全てがやりたい仕事というわけにもいかない現実と向き合い仕事をする必要がある。大事なのは今、目の前にある仕事を進化を遂げる前段階の仕事と位置付けきちんとこなすということだ。

労働と浪費

人間は幸せになるためにつくられた。これは自明の事実だと思っている。この幸せは価値のある努力によってのみ手に入る。自分自身を助ける最高の方法は、他人を助けること。他人を助ける最高の方法は、自分の仕事に専念することである。この価値ある仕事というのは、自分自身の能力を最大限に発揮して適切な鍛練をすることだ。私たちは鍛練によってのみ成長する。学問は生涯を通して続けなくてはならない。また精神面で努力して得る喜びは、特に年をとってからの 慰めとなる。正しい比率で仕事、遊び、勉強を交互にする人は、心がくじけない。そのような人は、死に対して恐れるところはない。富を所有しているからといって価値ある肉体労働をしなくてもよい、ということはない。 もしもすべての人が少ししか働かなかったら、働かされ過ぎる人はいないだろう。もしも、誰もに浪費癖がなければすべての人が満ち足りているだろう。もしも、誰も過剰に食物を得ていなかったら、飢えた人はいないだろう。財産があり教育のあるものも貧しくて教養のないものと同じように、精神修養は必要である。人に仕える階級が存在するということは、わが国のような文明国にとっては恥ずべきことであり、非難されて当然である。人に仕える階級が存在するとき、そのために起こる損害の多くは仕えられるものたちに降りかかる。仕えるものたちでなく── 奴隷制で生じた 災いが奴隷を使っていた主人たちの身にふりかかったのと、まったく同じである。

努力の上にのみ幸せが乗っかってくる。自分自身を助ける最高の方法は他人を助けること。自分の仕事に専念することでそれは得ることができる。自分の能力を研鑽し日々ぶち当たる壁を破壊し前へ前へ。しかし、それを妨げるものがある「浪費」だ。せっかく苦労をして得た賃金も浪費していては成長に役立たない。自分の収入と支出のバランスをきちんと把握してどの程度なら浪費にならないかを考えるべき。特に人を束ねる立場の人は収入も多いだろうが、そこで浪費してしまう人と自己研鑽にお金を使う人との間では差が開くし、下からの信頼度も変わってくることだろう。

楽しく、らくに、単純に生きるために必要な考え方を学んでいきます。人生に必要なポイントを理解していれば、所々にある落とし穴や地雷を踏まずに回避しながら生きていくことができるだろう。