book02321
ジョブズの師であり優秀な経営者。同時にグーグル創業者達をゼロから育てたコーチ。Amazon、Twitter、YouTube CEOらを鍛え上げ一人でシリコンバレーに途方もない成功をもたらした伝説とも呼べるリーダーの正体とは?

「最先端の研究」のはるか先を行く考え方

ビルのコーチングに対する考え方は、いつの時代にも通用するものだ。 このところ、コーチングは流行になっている。昔はコーチといえばアスリートやエンタテイナーにつくものと決まっていたが、いまはリーダーがエグゼクティブコーチに、社員がスピーキングのコーチに学ぶ時代だ。 だが実際問題として、プロの専業コーチは、フィードバックや指導が必要な機会のほんの一部にしか立ち会うことはできない。部下や同僚、ときには上司をコーチする責任は、すべてわれわれ自身の肩にかかっているのだ。 コーチングは、個人のキャリアにとってもチーム全体にとっても、メンタリング以上に重要かもしれないと、私は考えるようになった。ためになる言葉をかけるのがメンターなら、袖をまくりあげて自分の手を汚すのがコーチだ。 コーチは私たちのポテンシャルをただ信じるだけでなく、さらに一歩踏み込み、私たちがポテンシャルを実現できるように助けてくれる。私たちに自分の盲点が見えるように鏡をかざし、弱みに正面から向き合えるようにしてくれる。私たちがよりよい人間になれるよう手を貸してくれるが、私たちの功績を自分の手柄にはしない。 そうしたコーチのロールモデルとして、ビル・キャンベルほどふさわしい人物は思いつかない。

コーチングの本は多数出版されているが、どれも中途半端な感じがしていまいちピンとこない。本当の意味でのコーチングを知りたければこの本は必須。誰よりも成功した裏方としてその命をまっとうした伝説のコーチその手法はいかなるものかをみていこう。

スティーブ・ジョブズとの信頼関係

スティーブ・ジョブズが1985年にアップルを追放されたとき、ビル・キャンベルはそれに抵抗した数少ない同社幹部の一人だった。当時のビルの同僚デイブ・キンザーは、ビルがこう話すのを聞いたという。「スティーブを会社にとどめなくては。あんなに才能のあるやつを手放すわけにはいかない!」 スティーブは彼の誠意を忘れなかった。1997年にアップルに復帰してCEOに就任し、ほとんどの取締役が退任すると、彼は新しい取締役の一人にビルを指名した(ビルは2014年までアップル取締役を務めた)。 ※2 正確には、スティーブは1997年からアップルの暫定CEOを務め、2000年1月に肩書きから「暫定」の文字を外した。 スティーブとビルは親しい友人になり、しょっちゅう行き来した。日曜の午後にはパロアルト界隈を散歩して、あらゆるテーマについて意見を戦わせた。ビルは幅広い分野でのスティーブの相談相手であり、コーチ、メンター、友人だった。 だがビルはスティーブだけのコーチではなかった。じっさい、彼は1979年にフットボールを離れはしたが、ひとときたりともコーチであることをやめなかった。いつでも時間を取って友人や隣人、子どもの学校の親たちと話した。彼らをハグし、どんな話にも耳を傾け、彼らが視野を広げ、何らかの気づきを得、決定を下すのに役立つ物語を語った。 ビルが2000年にインテュイットのCEOを辞し(会長は2016年まで務めた)、次の挑戦を求めていたとき、ジョン・ドーアは、歴史あるベンチャーキャピタル企業クライナー・パーキンスに来て、投資先企業のコーチになってくれないかと、ビルを口説いた。

創業者のビジネスに対する熱量は凄まじいものがある。なので彼は創業者を大事にする。よくある光景として、創業当時は成功していたがなかなか次のステージに上がることができず低迷するといったケース。そんな時外部からの圧力に屈し創業者を追い出す形になるとその後、空中分解するケースが多いような気がする。なるべく創業者を残す経営判断をした方がその熱量やビジョンを共有できるのでそれだけでもメリットがある。

マネージャーは「決着」をつけよ

「マネジャーの仕事は議論に決着をつけることと、部下をよりよい人間にすることだ」とビルは言った。「『この方針で行くぞ。下らん議論はおしまいだ。以上』と宣言するんだ」 ビルはこのことを苦い経験から学んだ。アップルの幹部時代、決定を長引かせてしまい、事業に悪影響がおよぶという、正反対の状況に陥ったのだ。 「アップルはそのせいで低迷した。こっちの部門が何かをやり、あっちの部門がちがうことをやり、誰かがまた別のことをやりたがる。早く決断してくれと部下に迫られたが、私の担当はセールスとマーケティングで、Apple Ⅱ とマッキントッシュのプロダクトグループの議論に決着をつけられなかった。まさに泥沼で、何も進まなかった。あれは本当に 堪えた」 決定を下さないのは、誤った決定を下すよりたちが悪いかもしれない。 ビジネスでは決定が下されないことがしょっちゅうある。そこには完璧な正解など存在しないからだ。 だが、まちがっていてもいいから、とにかく行動を起こせ、とビルは教えた。決定を導くための適切なプロセスがあることは、決定そのものと同じくらい重要だ。そうしたプロセスがあれば、チームは自信を持って前進し続けることができる。 アドビシステムズの元CEOで、ビルとクラリスで一緒に働いたブルース・チゼンは、これを「誠実に決定を下す」と呼ぶ。すぐれたプロセスに従い、個人ではなく会社のためになることをつねに優先させて決定を下す、ということだ。自分たちにできる最善の決定を下し、前へ進め。

上層部が決めあぐねていると物事は進まない。スピード感を持ってビジネスを進行するには素早い決断がものをいうのはご存知の通り。それを証明すべく彼の周りで起きた事例をもとに「決着」をつけるメリットを解説。

スティーブ・ジョブズ、エリック・シュミット、ラリー・ペイジ名だたる大物のが師と仰ぐ伝説のコーチの手法を学んでいこう。