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私たちと密接な関係を持つ細菌の世界。奥深い腸内フローラの世界へようこそ!ダイエット、美容、糖尿病、うつ、アレルギーなど多種多様な事象に影響を与える腸内フローラとは?

腸内細菌がつくる物質「エクオール」は、お肌の若返りに有効?

「いつまでも若々しくいたい」というのは多くの女性の願いですが、更年期にさしかかってくると、どうしても目尻にシワが目立ちはじめ、肌のハリもなくなってきます。老化現象だからしかたない、と思いつつ、知人のなかにはシワがほとんど増えない人もいて、「いったいどんなお手入れをしているの?」と、ついつい気になってしまったり……。じつは、こうした肌の老化の早い、遅いを決めているのは、腸内細菌かもしれないのです。藤田保健衛生大学教授の松永佳世子さんは、腸内細菌が作る物質「エクオール」が女性の肌にどのような影響を与えるのかを調べました。ターゲットにしたのは、いわゆる〝目尻の小ジワ〟です。  実験では、 50 代から 60 代の女性およそ 90 人を、エクオールが入った錠剤を飲む人と飲まない人に分け、3か月間、目尻のシワを追跡しました。すると、エクオールを飲まなかった人はだんだんシワが深くなっていったのに対し、飲んだ人は、シワが浅くなっていったのです。その効果は、画像を見ても明らかでした。まさに、エクオールが肌を若返らせたかのような効果です。

最近ではシワ改善効果のある物質がいろいろ登場していて、一体どれを選んだら正解?と疑問を持っている人は多いのではないだろうか。シワは女性でなくとも気になるもの。男性でもいかに若々しくいられるかが印象を左右する時代。肌のケアで正解があれば知りたいですよね。このエクオール、錠剤を飲むだけでシワ改善効果が!?試してみる価値はあるかも。このようにある食べ物が美容や健康にいいとテレビやなんかで紹介されるとその食材が翌日スーパーで売り切れや品薄状態になるなんてことがよく起こります。でもちょっと待って、こうした体に良い影響がある物質は継続して摂取する必要があるので、一時的な流行で飛びついても継続しなければ意味がありません。流行りに乗って取り入れてはまた違う、物質や食物に乗り換えると言ったことを繰り返してはあまり意味がないのです。

腸から細菌の毒素が漏れると万病の元

腸内フローラのバランスが乱れると、腸の細胞が活力を失い、腸のバリア機能が低下します。すると、〝漏れる腸〟になって、血液中に「菌の毒素」や「生きた菌」までもが漏れ出してしまい、その結果、「全身の弱い炎症」が起きる、という流れでした。じつは、全身の炎症は「糖尿病」だけでなく、その他の重大な病気を起こりやすくすると考えられています。それは、「動脈硬化」と「がん」です。心臓病や脳卒中の原因となる「動脈硬化」は、血管の壁にコレステロールがたまってしまった状態、という説明をどこかで聞いたことがあると思います。これは基本的には正しいのですが、一般向けにかなり単純化されています。動脈硬化した血管の中にたまっているものの大部分はコレステロールではなく、〝白血球の死骸〟だからです。動脈硬化の仕組みをやや詳しく見てみましょう。いわゆる悪玉のLDLコレステロールが血管の壁にたまると、白血球の一種であるマクロファージが集まってきて、食べはじめます。異物であるLDLコレステロールを排除しようとするのです。しかし、マクロファージはコレステロールを消化することができません。どんどんため込み、最後には死んでしまいます。こうしたマクロファージの死骸がたまることで、血管の壁が分厚く盛り上がってしまうのです。

腸内から毒素が漏れる!これは怖い。腸内フローラを整える医薬品や食物は多数出回っているのでそう言ったもので免疫を上げておくのも一つの手ですね。

腸内細菌が脳に話しかける

酪農国のアイルランドでは、チーズやヨーグルトなどの発酵食品が食文化に根づいており、体にいい働きをする腸内細菌を含んだ食品、いわゆるプロバイオティクスの研究が古くから盛んでした。腸内細菌研究が大きな潮流となりはじめた今では、世界から数多くの科学者が集まり、研究の一大拠点になっています。脳科学者であるクライアンさんと、精神科医のディナンさんは、 10 年以上前から共同研究を続けています。いち早く脳と腸内細菌の関係に着目し、マウスを使った実験で数多くの成果を出してきました。そして現在は、人間を対象として「脳の機能と腸内細菌の関係」を探る研究を始めています。研究している脳の機能を具体的にいうと、記憶力、集中力、認知能力などです。じつはマウスの実験では、これらの機能と腸内細菌が関係していることがわかりはじめています。実験の参加者たちには、ビフィドバクテリウム・ロンガムという細菌が入った粉末を1日1回飲んでもらい、さまざまな脳機能の変化を調べていきます。脳機能の測り方は、いかにも現代的です。タブレット端末を使ってまるでゲームのようにさまざまなテストを行います。たくさんの図形の位置を覚えて当てる記憶力のテスト、次々と表示される数字の中から、あらかじめ決められた組み合わせを見つける集中力のテスト、一瞬だけ表示される顔写真から表情を読み取る認知能力のテストなどです。また、脳波の測定も行われ、脳の中でどんな変化が起きているのかも調べています。実験の結果はまだ出ていませんが、もし腸内細菌で記憶力や集中力が上げられるとしたら、受験勉強に励む学生や、物忘れが増えてきた中高年にとっては朗報です。でも、本当にあり得る話なのでしょうか?

腸は脳よりも賢いといった研究がなされるほど腸は重要な器官。これからさらなる研究が進めば意外な機能が発見されるかも?