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12万部ベストセラー『日本人にしかできない「気づかい」の習慣』の著者が自らの体験に基づき贈る、折れない心をつくる習慣。著者自身が節目節目で味わってきた挫折や苦悩。普通の人なら心が折れてしまうような大変な出来事をどのようにして乗り越えたのか。ぶれない軸を持ち、何者にも惑わされない強い心を育む。そして強い心があるからこそ人に優しくできるのだと言います。この本では、知恵、気づかい、作法、ぶれずに生きる7つの心構えについて説明します。

捨てるものは、自分で決める

何かを得るとは、何かを失うということでもある。だからこそ、何を得るのか。言い換えれば、何を優先するのかが重要です。選択するもの、捨てるものは、自分自身の意志で決めなければなりません。家族との時間を大切にしたいのか、お金がほしいのか、一人の自由な時間を持ちたいのか、仕事で自己実現をしたいのか──。もちろん、仕事も家庭も、すべて望むような生活を実現できれば一番です。ただ、世の中というのはそう簡単なものではありません。あれもこれもと求めてしまうと、必ずどこかで無理が生じてきます。自分の体や心、能力の限界を無視して動き続けることで、潰れてしまうのです。何も捨てない人生とは、言い換えると「何も決断しない」「重要なことを選ばない」。そんな人生でもあるのです。そのようなことでは、いつか大きな後悔を生んでしまうでしょう。何を捨てるわけでもなく、流されるままに生きるということも、見方を変えれば自分の性格や才能だけで生きていく、一つの生き様ではあります。ですから、うまくいっているときはよいのですが、問題は歯車が噛み合わなくなってきたときです。「どうしてこんなことに」「あのときこうしていれば」と、自分自身への怒りや不満が募ったり、それを人にぶつけてしまったりするかもしれません。うまくいかないにせよ、何かを得ようとして、そのために何を捨てるのかを自分でしっかりと選び、決断することができていれば、そのような事態は避けられるでしょう。

人生はトレードオフだと思います。時間とお金を考えるとわかりやすいです。身を粉にして働きそれなりの収入を得るようになった時、自由な時間が欲しいと思うのは自然なこと。ヨーロッパにように長期休暇が根付いていない日本では、お金と時間を天秤にかけなくてはいけません。若い頃に一生懸命働いて投資でひと財産なんて夢を語る人もいますが、日経平均の伸び率が低下している世の中ではあまり期待しすぎるのも問題。自分にはセンスがあると思った勘違いした人が高速で取引するAI投資家に根こそぎ奪い取られるのが落ちです。

失敗を知らないのは、ハードルを高く設定していないから

先ほど、秀でた能力を持っているのに「もったいない」と感じてしまう経営者の方がおられるという話をしましたが、一般社員においても同じようなことがあるようです。なぜかと言えば、昨今「今の若者は器用なやつが多い」などと仰っている経営者の方に出会うことが多いからです。これは褒め言葉ではなく、優秀ではあるもののどこか足りない。つまり、器用貧乏であるといった意味での発言です。詳しく話を伺ってみると、「失敗を恐れすぎているのか、型にはまりすぎていて爆発力がない」といった答えが返ってきます。仕事はソツなくこなすが、あと少し「何か」が足りない。しかし最低限の結果は出ているので、注意するほどのことでもない。そんな社員が多いようなのです。そのままにしておくと、失敗もせず、限界まで挑戦することもないので、現時点ではそれなりに優秀であっても、成長が期待できないということです。先ほどお話しした徳川家康の遺訓にも、「 勝事 ばかりを知りて負くる事を知らざれば 害其の身に至る」という件があります。それは経営者の方々も同じはずで、かつて苦労を重ねて今の地位に辿り着いた方々は、失敗をしない若者に対して、物足りないと感じているようです。

最近の新卒の子たちはエクセルやパワーポイントで美しい資料を作ることに長けていたりするのでそこだけ見ればできる部下に見えるが、実際の現場では資料作成に注力していてはスピード感に欠けるので、簡単な資料だけ用意しあとはアイデアやなんかに力点を置いた方が有利な場合も。美しい資料を作れば失敗しないと思うかもしれないが、時間のロスが目立つようではダメ。失敗しない資料作りよりハードルを高く設定した攻めた仕事をして欲しいものだ。

Apple社には熱狂的なファンが多い。それはなぜかと考えると、細部にまでこだわったデザインや性能が挙げられる。スペックだけ見ると他社製品の方が高かったり、同じスペックのものでもApple製品の方が値段が1.5倍ぐらい高いこともある。それでも支持されるわけを考えると知性と感性に同時にアプローチしているからと言えるだろう。日本人が知っておきたい心を鍛える習慣を多数収録したこの書籍では、しなやかな心の強さとは何かを考えさせられます。