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創造性、ひらめき、問題発見力、感情のコントロール…。高度な知的活動を司る脳の前頭葉は、実は人間の成長プロセスの中で、もっとも遅く成熟し、もっとも早く衰える器官だ。そして四十代の現役世代から思考は老化していく―。本書は、最新の老年精神医学の知見をもとに、「前頭葉の機能をIQで測ることはできない」「脳の動脈硬化が、思考の老化を加速する」「思考力よりも、さらに重要な試行力」など、脳のアンチエイジングをやさしく解説する。年齢に関係なく、思考の若々しさを保つ秘訣とは。

定年まで乗り切ればなどと考えないこと

「オレも頭が固くなったなあ。最近は仕事についていけないけれど、定年まであと五年、なんとか乗り切れればいいや」などと考えていては、ますます厳しさを増すビジネスの世界では、すぐに放り出されかねないのが実情である。「中高年のホワイトカラーの生産性が低い」「人員が過剰だ」などと言われて、あっという間にリストラされてしまう状況は、読者のみなさんもよくご存じだと思う。自分の前頭葉をアクティブにしておくことは、現代で生き残る必須の要件と言ってよい。ほんの少し前までは、前頭葉をあまり使わなくても「そこそこ仕事のできる人」と評価されていたのだが、今ではすっかり様相が変わっていることに気がつかなくてはいけない。近年、私は老化予防に関する本を何冊も書いてきたのだが、この本ではさらに積極的な「思考の老化」予防を呼びかけようと考えている。どういうことかと言うと、「このまま年を取ってしまっていいのか」と思い悩む中高年にとって、思考すなわち前頭葉の老化は、社会的生命をますます 危うくするからだ。実際に会社で 疎んじられたり、明らかな 閑職 に追いやられたり、悪くするとクビになってしまう。こうした強いストレスは「うつ」の原因になるから、そうなると生命そのものが 脅かされることになる。

ITの進化でこれから勉強しない高齢者はますます企業にとって老害となっていくだろう。新たに取り入れた社内管理ツールが使えなかったり、導入したソフトが全く使えず、覚えようともしないのでは生産性は上がらない。それでもなんとか乗り切れた団塊の世代はまだいいが、そのひと回り下の世代はもう逃げきれないと理解して勉強しなくてはならないだろう。

好奇心が衰えてくる40代、50代

まだ四十代、五十代で可処分所得がそれなりにある人でも、意欲や好奇心が衰えていると目新しいものに飛びつかない。すなわち、前頭葉の老化した人口の増加が、消費低迷の原因という仮説も成り立つ。逆に年を取っても前頭葉が活発で、お洒落に興味を持ち続けたり、スマートフォンなどの最新機器を使ってみようという高齢者(に限らず四十代、五十代)が増え、その世代の消費が一〇%でも伸びれば、人口が多いだけに効果は大きいはずだ。 『デフレの正体』は 示唆 に溢れる本だが、藻谷さんの理論なら、生産人口が減っていく国はすべてデフレが起こっているはずなのに、日本と同様に生産人口の減少社会となっている北欧諸国では、むしろインフレなのだ。それらの国々ではGDPが成長し、物価も上がっている。生産性も向上し、国民の元気もある。消費欲も 旺盛 なのだから、生産人口の減少だけでは説明がつかない。そう考えると、前頭葉の刺激を狙ったビジネスや景気対策の必要性が浮かんでくる。

僕もこの40代に分類される。若者についていこうと必死にもがく姿は滑稽に見えるのかもと思いながらも、SNSや動画作成など新しいものにも手を出している。スマホやMacなどのガジェットも毎回買い換えるわけではないが、Appleの新作発表会は毎回見ることにしている。好奇心は強い方なので、あとは自由になるお金といったところか。

オタクは好奇心の幅が狭いというが

いわゆるオタク系の人は、「好奇心の幅が狭い」という点では若干思考が老化的ではあるけれども、その圧倒的な深さは好奇心あってのたまものだ。最近、カミングアウトする人が増えた「 鉄 ちゃん」(鉄道ファン)は、思考の老化予防という点では、他のオタクよりも有利だと思っている。というのも、とくに「 乗り鉄」(鉄道に乗ることが好きな人)や「 撮り鉄」(鉄道写真を趣味とする人)、「 録 り鉄」(発車メロディや走行音の録音、走行シーンを録画する人)の人たちは、実際に行動してその場に行くからだ。「鉄ちゃん」に限らず、世の中にはさまざまなオタクがいて、ラーメンフリークと呼ばれる人なら「サバで 出汁 を取った」「伊勢エビで出汁を取った」などという新作ラーメンの情報を聞くと、「食べずにはいられない」という衝動が湧く。この「 止むに止まれぬ好奇心」というのが大事なのだ。好奇心の豊富な人は、なんでも興味のあることを見つけて楽しむのが得意だ。たとえばグーグルアースで「ニューヨークのこのエリアを空から見たら、どう見えるのだろう」とか「東京の 隅田川を源流まで 遡ってみよう」など、いくらでも遊べる。ところが思考が老化してくると、こうしたことを試してもみないで「くだらない」「面倒くさい」「何がおもしろいの?」と自分から遠ざかってしまう。

僕はオタクと呼べるほどではないが、アイドルは好きだし、Apple信者でもある、スタバも新作のフラペチーノが発売されると必ず試して見るので好奇心の幅が狭いと感じたことはない。強いて挙げれば行動範囲は狭いだろうか。

「思考の老化」が進むと一気に老け込んでしまうだろう。そうならないためにも、アンテナを張って新しいものに敏感に反応したいものです。「くだらない」と一蹴するのではなく、とりあえず試してみることです。