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日本の景気拡大はすでに5年を超えたが、その間、日本の世論は景気回復を予想できなかったばかりか、足元の景気がよくなっている現実すら認識できなかった。この間、著者は多くの経営者に会ったが、素晴らしい経営者は誰一人として景気論議には言及しなかった。なぜなら、「『問題は市場環境ではなく、自分自身にある』という現実を、優秀な経営者は理解しているから」だという。また著者によれば、「傑出した経営者の過去を辿ると、30~40代の頃に、経営者として求められる『思考』の原型がすでにできあがっている」とのこと。そして、「仮に経営者の地位を得られなかったとしても、自分の人生が価値あるものであったと自分自身で納得できる生き方ができていたのではないか」と推測する。組織はいずこもみな矛盾だらけで、理不尽なもの。だからこそ、その中でいかにして自分の人生の価値を高めていくか----。勝者の至言とともに、成功へのヒントを伝授。

メイドインジャパン

世界を見れば見るほど、日本人が持つモノづくりにおける特別な才能、才覚を自覚させられる。中国でもロシアでもインドでも、メイド・イン・ジャパンに対するリスペクトは、いまだに健在だ。もちろん欧米、アジア、中東でも、日本人は優れた技術屋集団として認知されている。これは恥じる話ではなく、誇るべき話だ。民族には民族固有のDNAがある。グローバルな視点を持つということは、お互いの違いを自覚することから始まるのである。だが日本人は、その自覚がまったくと言っていいほどなかった。日本人がいつまでたっても国際化できない理由は英語が話せないからではなく、世界がどのように存在し、その中で日本がどのような位置づけになっているかというグローバル・センスが欠落しているからなのである。

グローバル化が叫ばれるようになってだいぶ経つが、日本は未だグローバルという観点からすると発展途上国のような気がする。ということはまだ伸び代があると考える。世界の中での日本を再認識して発信していけばまだまだ発展の余地があるのだ。

市場の基本

不動産であれ、株であれ、原油であれ、市場というものはたえず流動化し、下がれば買い手が現れ、上がりすぎれば売り手が増える。時代、時代に応じて、もっともらしい理屈で語られる構造変化の議論は、その時々の経済を輪切りにした一断面の解説としては価値があるが、それだけのことにすぎない。そしてマスメディアというものは、そうした一断面をリアルタイムに伝えることを生業としているために、新聞もテレビも雑誌も、何から何まで均質な、同じ論調ばかりが繰り返されることになる。そうなると、どうしても、世の中が変わったのだなと思い込みがちだが、それがいけない。それは日本特有の村社会的な、たんなる思い込みにすぎない。世界には個人、法人を問わず、欧米からアジアから中東まで、値下がりして価値が相対的に高まれば、いつでも大量の資金を日本に投入しようという人々が溢れている。彼らは日本国内の論調がどうであるかなど、まったく斟酌しないし、する気もない。それどころか、ひとたび〝不動産はもうダメだ〟となったら投げ売り合戦を繰り広げる日本という国ほど投資しやすい国はない。あまりにもわかりやすいからだ。

株式取引のシミュレーションをしていた時、自分が得た情報をもとに取引するのだがその情報は大抵が遅く市場ではすでに折り込み済みといったことがよくあった。なので独自の情報ソースや一次情報なしに株式市場で成功することは難しい。長く放っておける余剰資金がないのであれば手を出さないほうが無難だと思う。

時代とともに

たとえば企業を評価するモノサシは、その時代、時代に応じて変わってくる。一九八〇年代後半、バブル景気が真っ盛りの当時は、不動産などの資産をたくさん持っている企業が持て囃された。PBR(株価純資産倍率)が株式投資の絶対的な目安とされた。ところがバブルが崩壊し、土地はもうダメだとなった途端に、不要不急の資産を大量に抱えている企業は資産を有効活用していないということになり、ROA(総資本利益率)やROE(株主資本利益率)といったモノサシが登場し、資産や資本をどれだけ有効活用して、効率的に利益を上げたかが問われるようになった。すると世の中には、そうしたモノサシを金科玉条のごとく扱う経営者やビジネスマンたちが現れてくる。どちらかといえば、大多数の人間はそうした流行に引きずられ、自ら思考することができない。十年前に不動産投資だと大騒ぎしていた人間にかぎって、今度は一転、資産など持たなければ持たないほど経営効率は上がるのだと言い始める。流行は何も若者のファッションやミュージックシーンだけにあるわけではない。ビジネスの世界でも現れてはすぐにまた消えていく、もっともらしい流行現象に溢れている。多くの人々は、そうした流行に右往左往し、思考停止に陥ってしまうのである。

ROAやROEも株をやっている人にとってはメジャーな指標だが、それだけで投資を行ってもなかなかうまくいかないのが実情。様々な企業環境を複合的に見てこそ次の一手が見えるもの。素人にはそれが難しい。

いい仕事をして、いい人生を送るための勝者の思考というのはどういったものか。人生で成功するためのマインドセットが読み取れる書籍。