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この複雑な世界を生き抜くために、私たちは、何を指針にすればいいのか?「よい人生」とはいったいどういうものなのか?古代の伝統的なモデルから最新の心理学研究の結果、ストア派をはじめとする哲学や、バリュー投資家の思考まで、膨大な研究結果をひもときながら、「よい人生」を送るための52の思考法を本書で明らかにする。

飛行機の操縦と人生航路

私は、趣味で飛行機を操縦するうちに学んだことがある。重要なのは、「スタート」ではなく、「離陸直後からの修正」技術だということだ。自然は、そのことを一〇億年も前から知っている。細胞分裂のときには、遺伝物質の複製エラーがたびたび起こる。そのため、どの細胞にも、こうした複製エラーをのちのちに修復するための分子が内包されている。このいわゆるDNA修復の機能がなければ、私たちは癌ができてからほんの数時間で死んでしまうだろう。「修正」は、私たちの免疫システムにおいても重要な意味を持っている。免疫システムに、マスタープランはない。排除すべき外敵を前もって予測しておくことは不可能だからだ。悪性のウイルスやバクテリアは何度も突然変異をくり返すので、常に排除方法を修正していかなければ体を防御できない。だから、もしあなたが、誰が見てもお似合いのカップルの非の打ちどころのない結婚生活が破綻したと耳にすることがあっても、さほど驚く必要はない。明らかに「はじめの条件設定」を重視しすぎた失敗例だからだ。

飛行機が予定通りの航路を取ることはほぼ無いのだという。人生も重要なのはスタート地点からゴールに向かって行く最中、微調整をなんどもしてリルートをかけることでゴールへと向かって行くもの。ゴールだって当初描いていた自分のゴールだってしょっちゅう変わる。そんな中では離陸直後からはじまる、修正の連続が大事になってくる。

サンプル数が少ないと、最適なものを見つけ出せない

私たちが抽出するサンプル数は少なすぎて全体を代表していないにもかかわらず、それだけの情報をもとに性急に決断を下してしまう。現実を反映しない間違ったイメージを自分の中につくりあげ、広い世界のほんの二、三種類のサンプルを試しただけで、人生のパートナーや、理想の仕事や、最適な居住地を見つけられると信じている。もちろん、それでうまくいくときもある。もしあなたが少ないサンプルの中からでも最適な選択ができているのなら、非常に喜ばしいことだ。だがその結果は、運よく得られたものにすぎない。少ないサンプル数で、いつも最適なものを見つけ出せるとは思わないほうがいい。世界は私たちが思っているよりもずっと広く、ずっと多彩で、いろいろなものを含んでいる。若いうちは、できるだけたくさんのサンプルを試すようにしよう。大人になってからの最初の数年間で重要なのは、お金を稼ぐことでもキャリアを積むことでもない。「人生の全体図を把握すること」だ。常にオープンな姿勢を崩さず、偶然が与えてくれたものはすべて試すようにしよう。本もたくさん読んだほうがいい。小説を読めばすばらしい人生を疑似体験できる。ものごととの向き合い方を変えるのは、年をとってからでいい。そうして年をとったら、かかわることをぐっと絞り込もう。その頃にはあなたはもう、自分の好みをしっかりと把握できているはずだから。

日常でもこのサンプル数が少ないため最適解を見誤るケースが多々ある。例えば成功者の体験を綴った書籍。たまたまうまくいった例として経営哲学を語られても‥‥自分には当てはまらない環境の良さや時代の波などで再現性が低いものばかりで当てにならない。あとはAmazonのレビューなどで評価は高いが回答数が圧倒的に低いもの。身内がさくらで高評価のレビューを書いている場合もあって信用ならない。ある程度星三つあたりのレビューが散見する方がかえって信用できたりする。

柔軟に対応することは、どうして「不利」なのか?

状況に応じて何度も決断をくり返すと、判断力が鈍ってくる。専門用語でいえば「決断疲れ」 と呼ばれる現象である。たび重なる決断に疲れた脳は、もっとも安易な選択肢を選ぶようになる。そしてそれは多くの場合、最悪の選択肢でもある。「誓約」が有意義なのはこの点だ。誓約を立てると、毎回、「メリット」と「デメリット」を天秤にかけて決断する必要がなくなる。決断はすでに下されているため、それ以上、思考のエネルギーを使わなくてすむのだ。たとえばスティーブ・ジョブズが毎日同じ服を着ていたのは有名な話である。頑固な姿勢が役立つふたつ目の理由は、「評価が確立される」 ことにある。一貫した姿勢をつらぬいていれば、あなたは自分のスタンスを知ってもらうことができる。周りの人たちに主体的な印象を与え、自分自身をゆるぎのない存在に見せられるのだ。

毎日の洋服をあらかじめ決まったものに決めておくジョブズなどのやり方は合理的だが、色々な服を楽しみたい人にとってはそれがデメリットになる場合も。

この複雑な世の中を生き抜くための指針がここに。見識の宝庫とも言えるこの書籍、ボリュームもあって読了後は満足感で満たされることでしょう。最新の学術研究から導き出された、より良い人生を送るための思考法を学べます。