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私たちの脳と心は、映像や音楽といった「情報」の影響を受けている。ときには、薬物同様に依存が形成され、脳と心は深刻なダメージを受けることがある。本書では、このような情報を「インフォドラッグ」と呼び、その危険性に警鐘を鳴らす。テレビゲームはとりわけ魅力的なインフォドラッグだ。親が放っておいたら、子どもはほとんどの時間をゲームに費やす。なぜなら、ゲームに夢中になっているとき脳内で放出されるドーパミンの量は、覚醒剤を注射したときとほぼ等しいからである。子どもたちをゲーム依存から救出せよ。

ゲーム依存の危険性

ゲーム依存になると、困ることが四つある。まず一つめは、大切な時間を現実世界ではなく、仮想世界のために浪費してしまうこと。ゲームに大切な人生を奪われるのである。二つめは、ゲームばかりやっていると、他者への思いやり、愛情、思考力、想像力、善悪の判断力といった理性をつかさどる前頭葉(オデコの部分)がきたえられないこと。たとえば、映像ばかり見ていると、想像力が発達しないから、見たものしか理解できなくなる。これでは、その人の持っている本来の能力が発揮されない。三つめは、暴力的になりやすくなること。前頭葉には暴力を防ぐ「衝動コントロール」という装置が備わっている。だが、前頭葉がきたえられないと、「衝動コントロール」が十分に利かないから、思考力や想像力が働かないだけでなく、すぐに暴力を振るい、キレてしまう。四つめは、ゲーム依存者がゲームを突然やめると、離脱症状が発生すること。それは、気分の落ち込み、疲労、不安、イライラに加え、重度の場合には、幻覚、白昼夢、からだの震えなどが発生する。このように耐性、依存、離脱症状を発生させるテレビゲームは、麻薬と少しも変わらない「インフォドラッグ」なのである。

重度のゲーム依存症の患者が数十時間ゲームをやり続けた結果死に至った例や、残虐な内容のシューティングゲームでシミュレーションを重ねた若者が実際の社会で銃を手に入れ乱射する事件が起こったりと、インフォドラッグが与える影響は様々。残虐なゲームには年齢制限があったりするが、それでも青少年に与える影響は大きい。僕も学生時代ゲーム依存症でロールプレイングゲームやシミュレーションゲームを徹夜でやって、次の日の授業では居眠りをしているなんてことが度々あった。大学に入ると成績が落ちるばかりでなく、授業を自主休講することもしばしば。結局、大学は中退しドロップアウトしてしまった。それだけゲームには依存性があるということだ。

今は時代も変わり、プロゲーマーなどという職種ができるほどゲームが上手いことは良しとされる風潮になりつつあるが、僕のやっていた格闘ゲームの大会では、優勝しても非売品のポスターがもらえる程度としょぼい優勝商品しか出なかった。日本では景品表示法があるので、いまだに賞金は少ないが海外だと億を超える賞金がかかった大会も。時代の変化を感じます。

暴力映像が子供に与える影響

暴力映像が子どもや大人へ及ぼす影響の三つめは、恐怖感を増し不安を拡大することである。暴力映像を見ることで、不信感が高まり、暴力が発生するのではという恐怖感を巨大化させてしまう。テレビや映画で暴力シーンを見た年少の子どもが、悪夢や不安に悩まされるのは、よくあることである。NIH(米国立衛生研究所)によると、アメリカでは総人口の六・五パーセントに当たる一九〇〇万人が不安障害(「不安」の正式な病名)におちいっている。忘れてはいけないのは、この一九〇〇万人という数値は、病的な不安である不安障害であって、普通の人が日常生活で不安を感じる正常範囲内の不安は数に入っていないことである。一生の間に不安障害にかかる割合は二四・九パーセント。うつ病の一九・三パーセントを超えて、アメリカでもっとも発生頻度の高い心の病だといえる。暴力映像を見ることが、不安障害をアメリカでもっとも多い病気にしている原因なのかもしれない。

よくある映画の暴力的シーンを見た観客が、映画上映後、映画館から出るとあたかも主人公になったが如く振る舞うなんて経験はないだろうか。ちょっと強くなった気分になっていたり、主人公の口調が伝染したり。子供だけでなく大人でもそうなるのだから、子供ならなおさらだ。

エクソシストがトラウマ

「医学雑誌には、『エクソシスト』や『ボディ・スナッチャー』などのホラー映画を見た後に、数日から数週間入院したという例がいくつも報告されています。最近の医学論文には、テレビでホラー映画を見た子どもが二人、ベトナム戦争を体験した兵士や身体的な暴力を受けた人にみられるPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんだことが報告されています。その一人は、八週間もの入院を余儀なくされました」  暴力映像を見ることで、子どもも大人も社会を実際よりはるかに危険なものと誤解し、間違った解釈のもとで行動するようになる。とりわけ子どもの場合はたった一度の恐怖体験が、なかなか消すことのできない、一生にわたる記憶となりうることが、トラウマ(心的外傷)にかんする研究から判明している。

僕は子供の頃に見たエクソシストという映画がトラウマだベッドの上の取り憑かれた少女が口から謎の体液みたいなのを吐き出すシーンが今でも目に焼き付いている。それ以来ホラー映画は苦手だ。

子供の脳を操る情報の数々。それらを「インフォドラッグ」と呼び、そのひとつ一つを解説。お子さんを持っている親御さんはどんな情報を与えて、どんな情報は遮断した方が良いのかの指標となることでしょう。