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幸之助の膨大な著作と発言記録から、知恵と勇気が満ち溢れる文章を厳選、抜粋・収録しています。自らの運命を生かし、自分だけしか歩めない道を切りひらく――そのためにはやはり日々の努力の積み重ねが必要です。「至極簡単、当たり前のことを適時適切に実行する」ところにこそ、商売・経営の発展の秘訣があると説いた幸之助は、日々の「自己観照」をとても大切にしていました。1日1ページを読んで、幸之助の言葉と向き合いつつ、自分自身を見つめ直してみてはいかがでしょうか。

自分が置かれた境遇を受け入れる

自分がおかれた境遇を素直に受け入れ、その運命を生かして前向きに生きる人物と、少年期に出会えることは幸運の最たるものです。逆境と見える境遇が、幸之助にとってはそうでなく、「順境もよし、逆境もまたよし」と言いえたのは、そうした「心の体験」の連続から得たものが大きかったのではないかと思われます。では実際にどうしたら、私たちは私たちなりの「逆境もまたよし」の心持ちを得ることができるのでしょうか。そして自分の運命を生かし、運命に優遇される人──世間でいう成功者とは少し違うことはもうおわかりでしょう──になることができるのでしょうか。幸之助が生きた時代に比べれば、今は、好きなことをやって生きることが、より可能な時代であり、門戸が開かれている職業は無数にあるといえます。しかし、そんな時代だからこそ、自分という一個の人間をよくつかんで、生かすことが、一層求められているはずです。

松下幸之助の成功秘話については多くの書籍が出ているが、どれも今の時代には当てはまらない過去のサンプル数1の結果に過ぎないように思う。そんな中でも今でも色あせない金言は数多くありそれらは今でも有用かと思います。

運命を生かす

君が「徳が大事である。何とかして徳を高めたい」ということを考えれば、もうそのことが徳の道に入っているといえます。 「徳というものはこういうものだ。こんなふうにやりなさい」「なら、そうします」というようなものとは違う。もっと難しい複雑なものです。自分で悟るしかない。その悟る過程として、こういう話をかわすことはいいわけです。 「お互い徳を高めあおう。しかし、徳ってどんなもんだろう」「さあ、どんなもんかな」というところから始まっていく。人間としていちばん尊いものは徳である。だから、徳を高めなくてはいかん、と。技術は教えることができるし、習うこともできる。けれども、徳は教えることも習うこともできない。自分で悟るしかない。

徳の高い人というと僧侶を思い浮かべるが、それだって皆が皆徳が高いとは言い切れない。一般人でも一緒、比較的地位の高い人はおそらくこのような徳を積んできた人も多くいる一方、そうでない人もたくさんいる。一朝一夕で得られるものではなく長い時間をかけて会得していくものだと思うので、信用と一緒にこの徳というものも意識して得て生きたいものです。

自分をつかむ

いかなる聖人君子といえども、完全無欠な人間になるなどということは不可能だと思う。なぜなら神は、人間を人間としてつくったのであって、神のごとき 完璧 なものとしてつくっているとは思えないからである。だから、お互い人間として、一つのことに成功することもあろうし、時には 過ちもあるだろう。それは人間としてやむをえないというか、いわば当たり前の姿だと思う。しかし、過ちと正しいことを通算して、正しいことのほうがプラスになるような働きなり生活をもたなければ、これは人間として決して望ましい姿とはいえないと思うのである。例えば、ある人はあることには非常にすぐれたものをもっている。しかもそれには生命を打ちこんで成果をあげている。それを今、仮に点数で表し、一方またその人が他の面で失敗したことも点数に表してみると、はたしてどうなるか。僕は、前者のほうが後者よりも点数が高いというか、プラスになっているということが少なくとも必要だと思う。それを自ら評定して、自分は大体何点くらいあるかということを、素直に考えてみることが大事である。

自分の人と比べて優れているところを見つけそれを掴んで伸ばしていくことが大事ということか。

考える力を高める

私は、お互い人間はあたかもダイヤモンドの原石のごときものだと考えている。つまり、ダイヤモンドの原石は磨くことによって光を放つ。しかもそれは、磨き方いかん、カットの仕方いかんで、さまざまに異なる 燦然 とした輝きを放つのである。それと同じように、人間は誰もが、磨けばそれぞれに光る、さまざまな素晴らしい素質をもっている。だから、人を育て、生かすにあたっても、まずそういう人間の本質というものをよく認識して、それぞれの人がもっているすぐれた素質が生きるような配慮をしていく。それがやはり、基本ではないか。もしそういう認識がなければ、いくらよき人材がそこにあっても、その人を人材として生かすことは難しいと思う。

よく磨けば光るというが、ダイアモンドのように様々なカットを加えて光の具合を調整することを考えると、ただ磨けばいいといったことでもなさそうだ。磨き方にも流儀がありそれに従わないと光り方も変わってしまいます。

松下幸之助の成功に関する金言が詰まった書籍。彼の生き方を丸っとコピーすることは時代背景を含めて難しいが、その金言の中には今の時代を生き抜くのにも役立ちそうなものもいくつかあります。運命を生かすための言葉がここに。