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坂本龍馬・上杉謙信・武田信玄・吉田松陰…歴史のスターが教科書から消される!教科書から消されようとしている45人の偉人をピックアップし、それぞれの人物の功績とともに、その消される理由や教科書から消えてしまうことによる日本の歴史教育への影響を考察しています。現在も、歴史教科書から偉人を消そうとする動きは進行中です。手遅れになる前に、この問題を広く周知させたいと考えています。本書をお手にとっていただき、多くの方々に議論していただければ幸いです。

上杉謙信(義を重んじ、無欲を貫いた戦国最強の軍神)

【地方の大名だから消えるのか?】

『詳説日本史B』での謙信の記述を参照して見ましょう。

ーー中部地方では、16世紀半ばに越後の守護上杉氏の守護代であった長尾氏に景虎が出て、関東管領上杉氏を継いで上杉謙信と名乗り、甲斐から信濃に領国を拡張した武田信玄(晴信)と、しばしば北信濃の川中島などで戦ったーー(p148)

編年体の教科書らしい、無味乾燥な記述。これでは教科書から消えてもおかしくないといったところか。この記述が消えたとしても、僕たちは教科書以外の漫画や書籍、ゲームなどから彼の偉業を知ることはできる。敵に塩を送るエピソードなどは有名で彼の義を重んじる姿勢が後世へと引き継がれていくこととなるのに、教科書はもういらないということか。

武田信玄(領土欲は強かったものの地政学的な不利が影響)

【中部地方の一大名、という扱いに?】

『詳説日本史B』では、信玄はどのように記述されているのか見て見ましょう。先のページでふれた、謙信と同じ箇所に記述されています。

ーー中部地方では、16世紀半ばに越後の守護上杉氏の守護代であった長尾氏に景虎が出て、関東管領上杉氏を継いで上杉謙信と名乗り、甲斐から信濃に領国を拡張した武田信玄
(晴信)と、しばしば北信濃の川中島などで戦ったーー(p148)

淡々とした記述だが、この部分は両者のいがみ合いが色濃く出ていて面白い。信玄もまた中部地方の一大名とカウントされ消えゆく定めとなってしまうのか。新たな高大連携歴史教育研究会の精選案では、武田信玄(晴信)という個人の表記はなくなり、「武田氏」と一括りにされるようになるそう。次の歴史の教科書では、「中部地方では、上杉氏と武田氏が領土を争った」程度の記述になってしまうのかもしれない。

毛利元就(国人領主から身を起こし中国8カ国を制したスーパースター)

【古い権威を振り払う男の生き様が消える】

『詳説日本史B』では、元就はこのように記述されています。

ーー安芸の国人からおこった毛利元就がこれ(編集者注:陶晴賢)にかわり、山陰地方の尼子氏と激しい戦闘を繰り返したーー(p149)

三本の矢のエピソードでも有名な毛利元就だがこれも教科書では淡々と書かれている。教科書にドラマを求めるのは筋違いかもしれないが、歴史的事実とは別のところに面白さがあるのが日本史だと思うので、ちょっと寂しい。

長宗我部元親(土佐を平定した後に四国を併呑した雄一領具足の見事な活用でも知られる)

【四国のスターが消えることに疑問】

『詳説日本史B』での長宗我部元親の記述はどうなっているのでしょうか。

ーー秀吉は1585(天正13)年、朝廷から関白に任じられ、長宗我部元親をくだして四国を平定すると、翌年には太政大臣に任じられ、豊臣の姓を与えられたーー(p160)

この時期の秀吉が武力だけでなく朝廷という権威をフル活用して天下統一を図ったことがうかがい知れる一文だ。この一文で秀吉に攻め込まれる前までは四国の覇者であったことは窺い知れるが、それで四国の人は納得するだろうか?

益田(天草四郎)時貞(幕藩体制がほぼ固まっていた時代に12万の大軍と戦った究極のカリスマ)

【信教の自由を貫いた少年】

『詳説日本史B』では、時貞はどのように記述されているのか見てみましょう。

ーー1637(寛永14)年には、島原の乱がおこった(中略)島原半島と天草諸島は、かつてキリシタン大名の有馬晴信と小西行長の領地で、一揆勢の中には有馬・小西氏の牢人やキリスト教徒が多かった。益田(天草四郎)時貞を首領にして原城跡に立てこもった3万人余りの一揆勢に対し、幕府は九州の諸大名ら約12万人の兵力を動員し、翌1638(寛永15)年、ようやくこの一揆を鎮圧したーー(p176)

原城跡に立てこもった少年のカリスマ性を見事に描いた記述だがこれも歴史の教科書から消えてしまうのか。宗教について考えさせられる出来事でもあるのでこれは残して欲しい出来事だが。

僕が歴史に興味を持った時代をメインにどんな人物が消える可能性ありなのかを見てきたが、歴史は今や教科書で学ぶものではなく、漫画や、ゲームなどでまず興味を持ちそこから深掘りしていくものなのかもしれない。歴史から学べることは多いので、日本史を教える先生は増え続ける用語の数を抑えつつ、興味を持ってもらうことが大事だということだ。