book01279
傷ついたこころはどのようなプロセスを経て回復するのか。第一級のサイコセラピストによる感動のドキュメント。子どものこころを傷つけない大人になるために、そして私たち自身が“こころの中の子ども”の傷を癒し、能力を十分に発揮して幸せに生きていくために、本書が役立ちます。

「生きている」という実感がなかった

子どもが大人に守られて自由な子ども時代を生きてこないと、大人になってから子どもに対し、 嫉妬 の矛先が向いてしまいます。自分が親のために我慢を重ねてきたのに、子どもが自由でいるのは許せない、と思い込んでしまうのです。大人の嫉妬による支配は、子どもの結婚相手の選択にも強い力を及ぼします。自分が決めた相手であっても、親から 歪んで育てられたことが影響してしまうことが多いのです。母親の二度目の結婚がその実例です。二番目の夫は、知り合ってすぐに母親に対して、「何もしなくていいから、そばにいてほしい」と言ったといいます。この言葉は決定的な意味をもちました。母親は「こんな人がこの世にいるのか、と思った」と語っています。もしも母親が子どもの頃、祖母から「居るだけで価値のある存在」として守られていたならば、この夫の言葉に動かされることはなかったでしょう。しかし実際には、祖母から労働力としてあてにされてはいましたが、子どもとしての価値を認められることはなかったのです。二番目の夫は、妻に甘えて、独り占めすることを求め、そのため子どもは邪魔になり、やがて敵視するようになりました。夫は妻にすがらないと生きられない人、妻は夫に必要とされないと不安になる人、だったのです。このようなカップルの間に子どもが存在すると、親子の関係というより、夫と妻との間を巡る三角関係になってしまいます。妻が子どもを大切にすると、夫は見捨てられたとの感を強くもち、三角関係の勝利者になろうとして、子どもを排除しようとします。妻も無意識的に夫に加担し、見て見ぬふりをします。こうして、子どもは傷つけられていくのです。

連れ子が実子ができたことによって、邪魔者扱いされるケースや、もともと親として不適合な人間による妊娠出産によって子供が不幸になるケースがよく報道される。子供に対する暴力がエスカレートして子供を死なせてしまう悲しいニュースが日々報道される。児相の対応に不手際があって、暴力を振るう親元に一時保護していた子供を返してしまう。そんなことが何度繰り返されれば、悲しいニュースが減るのだろう。保護猫のように新たな飼い主の元に引き取られていくような制度が人間にもあるにはあるが、あまり活用されていないように思う。やはり自分の子が欲しいということで不妊治療に勤しむわけだ。

太陽のように明るく人懐っこい女の子

「最初の症状を見る限り、私もいろんな本を読んで調べて、統合失調症かなと思ったんですけど。最近は、『誰かに監視されている』と言って、何も言われてもいないのに、『みんな私のことをウザイと言っている』とか、『目つきが変だと言っている』と言い、いつでも自分の悪口を言われていると訴えて、被害妄想が強くなりました。何かを考えたりすると 動悸 がすると言います。症状が出る一カ月くらい前頃から具合が悪くなって、食べてはいたけど、三、四キロくらい 痩せたみたいです。ずっと眠れなかったようで、『眠れなかったから、何も感じなかった。ここ( こころ)が空っぽで、スースーする』と言っています。でも今は逆に寝てばかりいます」このように、お母さんはD子さんの症状や状態について語りました。これほどまでにD子さんが重い状態であるにもかかわらず、お母さんの明るさは消えず、困っていることは伝わってくるのですが、切実な深刻さが感じられません。「病院で心理検査を受けたのですが、空想に逃げていく性格だと言われました。薬を服用してから、言葉が話せるようになった半面、変な妄想を言い始めたのは薬の副作用なのでしょうか。今になっていろいろと考えると病院に行ったのがよくなかったのかな?と思ったりしています。睡眠薬を飲むと朝は起きられないので、飲みたくないと言ってやめています。病院も精神科なので、通院するのを嫌がっています」と語り、お母さんはD子さんの面接を希望しました。

精神科というと未だに誤解を持っている人が多いような気がする。犯罪者が逮捕後、責任能力があるか精神鑑定を行うケースがあり、それによって悪いイメージがつきまとう。精神疾患は誰にでも起こるものであると認識を変えた方が良い。僕もかつては精神疾患を抱えた患者について偏見を持っていたが、自分が統合失調症にかかることで、きっかけとなる事象があれば誰でもかかる危険性があると認識を変えた。入院中も、この人普通なのに、なぜ入院しているのだろうという患者がたくさんいたが、入院するだけの症状や環境だったのだろう。

傷ついた心をどのように回復に導くか?第一線で活躍するセラピストが、数々の事例とともにそのプロセスを解説。精神疾患は本人だけの問題ではなく、その子の親の問題でもある。親子の心理療法がここに。