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PLAN(計画)、DO(実行)、CHECK(検証)、ACTION(調整)の4ステップからなるPDCAサイクルは、ビジネスパーソンであれば誰もが知る古典的なフレームワークだ。しかし、PDCAほどわかっているつもりでわかっていない、そして基本だと言われているのに実践している人が少ないフレームワークも珍しい。PDCAを極め、「鬼速」で回せるようになると、仕事に一切の迷いや不安がなくなる。そして、常にモチベーションを保ったまま、天井知らずに成果をあげられるのだ。

よく聞くフレームワーク「PDCA」

PDCAサイクルは統計学者が品質改善を目的として考案したマネジメント手法である。実際、経営・管理業務・プロジェクトマネジメントには、絶大な効果を発揮する。ただ、そのイメージが強いばかりに「自分がチームを持つ立場になったら考えればいい。いまの自分には関係ない」と思っている若い世代が大勢いる。PDCAは対象を選ばない。上司や部下との関係を良くする、日々の時間の使い方の無駄をなくす、人脈を増やす、プレゼン技術を高める、交渉力を強化する、家族サービスの質を高める、恋愛上手になる、趣味で上達するでもいい。だからこそ若い世代こそPDCAを真剣に回すべきだ。ゴールを定め、そこへの最短距離を探りながら前進を続けるための原動力となるのがPDCAである。個人レベルで、そしてプライベートな目標でも積極的に活用できるのである。また、PDCA力を身につけるなら、早いに越したことはない。若いときからPDCAを回す習慣を身につければ、果てしなく高いゴールへも到達できる。なぜなら、成長モデルであるPDCA自体も成長するからだ。私がPDCAを回し始めた時期のPDCAの対象は、ほぼ、支店の営業マンとしての「新規開拓」に絞られていた。ただ「新規開拓」といってもさまざまなプロセスがある。それらを必死に分解して、効果のありそうな課題を選んではPDCAを回していた。もちろん、それだけでも成果は出るが、PDCAを回す行為自体も試行錯誤を繰り返し、精度と速度を向上させ続けたことで、最終的な成果は「スキルの成長」×「成長スピードの加速」という二乗で増えていったわけである。

よく聞くフレームワークだが人は意識しなくても何か物事をうまく処理しようと考える際には、「PDCA」を自然と意識せずに回しているのではとも思ったりする。僕もそのうちの1人だ。本など読まなかった若い頃にも順番は違えどこのフレームワークを利用していた。僕の場合、DO(実行)、CHECK(検証)、ACTION(調整)、PLAN(計画)の順番だった。失敗するのはこのうちのCHECK(検証)が甘かったりするからだろうと思う。

証券マン時代に実践した鬼速PDCA

若手社員や私のセミナーを聞いた学生から「どうやってこのレベルまでのPDCA力を身につけたのか?」とよく尋ねられる。それに対して私は必ずこう答える。「社会人になってから1日も休まず、やり続けてきただけです」と。ちなみに社会人1年目のときの大PDCAは「1年目の営業成績で、全国の3年目までの営業マンのなかでトップに立つこと」だった。 ただ、それを分解すれば「新規開拓200件」といった中PDCAが見え、それが見えればそれを実現するための小PDCAが見えてくる。その小PDCAのなかでも、当時、支店の飛び込み営業をしていた私にとって、もっともクリティカルなPDCAは「受付突破」だった。よって最初の1年目はほぼ「受付突破」のPDCAしか回していないといってもいい。でも結果的に大PDCAは達成できたわけである。当時の私が行っていたPDCAはこのような感じだ。まずは計画のフェーズ。受付突破は受付担当とのたった1分、下手をすれば5秒、 10 秒で決まる世界なので検討すべきことは多くない。とにかく「第一印象」が重要な要素になることはすぐにわかる。そこであるときは「笑顔を絶やさず、ゆっくりと発言してみればいいのではないか?」と仮説を立てた。計画を立てたらそれを実行してみる。例えば一日単位でサンプルをとってみるというように。サンプルをとったら検証だ。うまくいかなかったらその原因を必死に考えた。ここが若干難しいが、少なくとも仮説は立てられる。「もしかして新人だと思われてなめられたのかな?」と。ただ、ここで思考が止まってしまってはPDCAサイクルが止まる。思考が止まりそうなときは、「なぜ」か「どうやって」を自分に問えばいいだけだ。

PDCAを高速で回すことによって得られるものも多い。CHECK(検証)の段階で思考が止まりがちになるのを意識していけば誰でも物事をうまく進めることができるだろう。

三日ごとの振り返りで自分もチームも10倍速で進化する。スピード重視のビジネスの世界ではいかにPDCAを速く回すかが重要になってくる。そんなサイクルを生み出す助けとなる書籍。