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「人は近くにいる人を好きになる」「人は漏れ聞いたことに感化される」「集団で話し合うと意見が極端になる」――多数の事例をもとに心理学的見地から明らかにする“影響力”の実態。人間関係の要諦は影響力にあり。心理学からのアプローチ。

人はアメとムチに弱い

テレビゲームに興じていた健太に、お使いに行くように影響を与えた源泉は、母親が健太に約束したお小遣いでした。小学生の健太にとって、たとえば、100円のお小遣いは価値あるものです。それを貯めて好きなマンガ本を買うこともできるし、好きなお菓子を買うこともできます。こうした受け手にとって手に入れたいと思うもの、望ましいものをここでは賞(reward)と呼ぶことにします。ほかには、報酬という表現もありますが、次に挙げる罰と対照させるために、単に賞と表現したいと思います。そして、与え手が受け手に賞を提示して、依頼した行為の実行と引き替えに賞を与える場合、受け手は賞影響力の影響を受けたことになります。母親と健太の会話に戻ると、健太の行動を変えることに大きな効果をもっていたのは、母親が健太に対してコントロールしているお小遣いでした。コントロールというと、ロボットやラジコンカーを遠隔操作するという一般的な印象がありますが、ここでは、お小遣いを自分の考えるままに相手に与えたり、減額したりすることができるという意味で使っています。

思えば僕の小さい頃はお金を使わない遊びをいかに作るかが楽しみの一つだった。近所の商売人の子供がゲーム機など高価なおもちゃを早々と手にしていて、それに仲間が群がることもあったが、環境的にはいろいろな遊びを自分たちで考えるような環境だった。たまにお小遣いをもらうと駄菓子やメンコなどを買いに近所の駄菓子屋をはしごしたりしたものだ。こうしたアメによって影響を与え、行動を変えるよう促すのは、子供だけではなく同じくお小遣いをもらうサラリーマンにおいても効果的だと思う。思いもよらぬ収入は幾つになっても嬉しいもんだ。

人は好きな人に弱い

私たちはふだん、テレビで毎日同じコマーシャルが繰り返し流されるのを目にしたり、選挙の時には候補者や政党の名前が連呼されるのを耳にしたりします。私たちは時としてそれらをうるさく思うわけです。しかし、単純接触効果という観点から見れば、対象を繰り返し提示することは、新製品や候補者に関する情報を消費者や選挙民に提供するだけでなく、対象への受け手の好感度を高めるという副次的な側面もあることがわかります。ある人と対面する場合でも、例えば、受講生にとって初めは特に印象のなかった研修の先生やゼミの教員が、授業を通して何回も接触するうちに、結構、いい感じの先生ではないかと思うようになることは、ありうることだと思います。誰かに好かれようと思ったら、何度も定期的にその人の前に顔を出すのが一つの方法であると言えるでしょう。ただし、「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」という言葉を忘れてはいけません。

好みの女の子を落とそうとせっせとキャバクラに通うオッサンもこのような事例に当てはまるだろう。あちらも客商売なので、幾度となく通ってくる客には優しくなる。しかし、忘れてはならないのは、それは客商売だからと言うこと。高い金を払ってお酒を飲む客に優しくないわけがありません。なので僕は商売女はお断りと言うかそんなことにお金を使う余裕がありません。せいぜいカフェで店員さんに笑顔で対応されてちょっといい気分になる程度です。

人は人の行動に弱い

「みんながもっているから、ゲーム買って」 「みんながもっているから自転車買って」どうも、この「みんながもっているから」という子どもの一言に、世間の親は弱いようです。ファッション(たとえば、ルーズソックス、マフラー、ブーツ)やおもちゃ(たとえば、ミニ四駆、ベイブレード、たまごっち)などの流行が生じる背景には、自分の周りの人が身に着けたり、もったりしており、それが社会的証明となって自分も同じ行動を取るという側面があると言えます。先に紹介したミーム学から見れば、そうした模倣が文化や習慣を形成していくことになるのです。最近のテレビ・コマーシャルでよく目にする表現として、「売り上げナンバーワン」「○万人のお客様にご満足いただいております」というものがあります。これらも暗に、その商品を使っている人が、既にたくさんいるということを視聴者に伝えようとしているわけです。

顧客満足度90%以上とか、売上ナンバーワン、ベストセラーなど僕たちの周りには他人がいかにその商品を好んで買っているかを示すCMや広告にあふれています。ついついみんなが買っているのならと手を出したくなるのが人情。こうやって流行は生まれていくのです。僕はファッションでもなんでもちょっと流行し出してからその商品の存在に気づく層(アーリーマジョリティ)だ。パソコンやiPhoneなどは必要とあれば発売日に購入するが毎回買い換えるほど感度が高いわけではない。ネット上でみんなが騒ぎ出すタイミングで自分もその商品に興味を持てば買うといった感じ。

人間関係や購買行動など世の中には様々な影響力の上にみんな立っている。影響力についてその効果と威力について論じた書籍。心理学からのアプローチは「そうそう!」「あるある!」と思わず声が出てしまいそうなものばかりです。