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人は、自分が欲しいものを説明できない。消費者は、商品を見せられて初めて、「欲しい」かどうかを感じます。既にいまの時代、消費者に直接聞くことで分かるニーズは充たされており、これまでの延長線上のモノ・サービスでは「欲しい」と思われずに、売れない時代になっています。これらを解決するのが、人を動かす隠れた心理「インサイト」です。閉塞的な状況にイノベーションを生み出し、新たなアイデアを生み出す武器といえます。本書では、このインサイトの定義、見つけ方に留まらず、どうやってビジネスで生かすのかといった実践までを、豊富な事例とともに解説します。著者が600件以上の案件で培った、そのフレームワーク、メソッドを体系的に公開しています。売れなくなっている商品を再生したい、イノベーションを起こす商品・事業を開発したい、今までにないビジネスに生きるアイデアを考えたい、といったすべての方へ。本書は役立つ内容になっています。

いま、消費者は「だいたい、良いんじゃないですか?」の時代

たとえば、あなたが街を歩いていて、「ペットボトル入りのお茶が飲みたい」と思い、目についたコンビニエンスストアに入ったとしましょう。明らかに「不味そうだな」という商品はさすがに並んでいません。しかし、「こういうお茶が飲みたかったんだ!」と思えるようなお茶がありません。どのお茶も「だいたい、良いんじゃないですか?」とは思える。でも、それ以上の言葉が出てこないのです。あるいは、家電量販店で、液晶テレビのコーナーに行ったとします。何十台ものテレビが陳列されています。どれも画質はきれいです。4Kだ、フルハイビジョンだ、という声も聞こえます。でも、「ふーん、それで?」と感じるだけで、心が動くことがありません。ここでも「だいたい、良いんじゃないですか?」という結論に落ち着きそうです。 「いや、私はこの緑茶が大好き。だって明らかにおいしいから、これがいいんです」 「同じ4Kテレビでも画質は全然違うし、この機種の録画機能はすごく充実している」そんな人もいるかもしれません。しかし、多くの人は、こんな「だいたい、良いんじゃないですか?」な気分ではないでしょうか。お茶やテレビはあくまで一例に過ぎません。あらゆるモノ・サービスが、「だいたい、良いんじゃないですか?」という状況になっているのです。ちなみに、この状況は、先進国に共通の現象だといわれています。

家電や日用品、その他、最近では各々の企業が新しい機能を載せるたびにそれ他の企業が模倣し、横並びの製品が店頭に並んでいる。どれを選んでもそこそこ満足できるという状態が現状だろう。「これだ!」というジャストフィットな商品を求めてみるも、どれも80点台の商品ばかりで、なかなか自分の思い通りの商品は見つからないとも言える。そうなってくると消費者は諦めて「だいたい、良いんじゃないですか?」となってしまう。

人を動かす隠れた心理=インサイト

マクドナルドを食べた経験のある人であれば、ハンバーガーの肉のおいしさは記憶に刻まれています。「マクドナルドでお肉たっぷりのハンバーガーにガブッとかぶりつきたい」という欲求は、日常的には意識から遠ざけられていますが、その記憶からすればとても魅力的で、「マクドナルドに行く」という気持ちに抗うことができないくらいの、強いパワーを持つものだったのです。 「健康」「ダイエット」という建前的な意識が覆い隠している、「肉を食べる快感」という欲求を刺激する。これが、「メガマック」や「クォーターパウンダー」の成功の理由だったのです。

消費者にアンケートを取ると、ダイエット中でも食べられるヘルシーなものをという意見が多くあったが、実際にそのような商品を投入してもなかなか売上に結びつかない。なぜなら、ヘルシーなものを求めるダイエット中の人はマクドナルドに足を運ばない。がっつり食べられるメガマックやクウォーターパウンダーの方が売れ行きはいいのだ。最近でもこの路線を継承して、客足が減る夕食時のサービスとして、プラス100円でパティを2倍にできるサービスを開始した。結果はどうだか知らないが、マクドナルドに求められていることはこういうことだろう。

ターゲットの興味や関心に寄り添うこと

男性ミドル層で「スキンケア」に関心が高い人は多くありません。実際に肌の手入れを細かくしている人の比率は低いのが実態です。こういった層向けの新ブランドを開発するためにインサイトを調べる場合、どのようなことに着目すべきでしょうか。「買わない理由」を探る時と同様に、まずその人たちにとって関心がある物事のインサイトを探ります。ここでは、「スキンケア」や「肌」のことではなく、「自分の顔」についてのインサイトを探ることにしました。肌のお手入れはしておらず、スキンケアには無関心でも、自分の顔について関心がないという人は少数派だからです。そして、顔に関することと比較させることで、肌について感じていることを読み取れると考えたからです。

最近では若い人を中心に男性でもスキンケアは大事という認識が定着しつつある。僕も若くはないが、多くの商品を試してみて自分のお気に入りのスキンケア商品を見つけた。興味のある方はブログの方を見ていただければ洗顔料や化粧水、乳液などの使用感をのっけています。

商品がいかに消費者の心に刺さるものになるかはターゲットの興味や関心をアンケートの奥底に眠るインサイトを狙い撃ちするところで決まる。「欲しい」の本質を知るためのステップがわかる書籍です。