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「速く・確実に・高品質のモノが届く」現代社会のインフラとも呼べる存在アマゾンは、どうしてそんなに速くモノを届けられるのか。一体、どんな人間が、どんな仕組みで、どんな仕事をしているのか。本書では、今まで謎に包まれてきたアマゾンの実態について解き明かしていきます!

配送のスピードが変わった

もう1つ、インターネットが通販業界に与えた大きなインパクトがあります。ネット通販登場以前のカタログ通販などでは、「いつ届くかわからない」のが常識でした。注文してから実際に商品が手に入るまでに大きなタイムラグがあったのです。注文したことを忘れた頃に届くこともありました。しかし、ネット通販、特にアマゾンの登場によって、「通販で注文した商品はすぐ届く」ことが当たり前になりました。今では、アマゾンで日用品を購入する人も多いと思います。明日ないと困るような品物を注文できるようになったということは、商品がすぐ届くことの証拠でもあります。

注文した商品が翌日届くようになってからは、日用品や今までスーパーで買うしか選択肢がなかったお米など思い品物もネットで買う人が増えているようです。これに対抗して大手スーパーなどでは自宅配送サービスなどを導入して帰り道で重い思いをしないで済むようサービスを拡大しています。さらにアマゾンではアマゾンダッシュボタンなるものを導入し、日用品が不足してきたら、ボタン一つで簡単に注文できるサービスなどを打ち出して、Webサイトを訪れる時間すら惜しい忙しい人たちにアピールしています。とにかく便利なお急ぎ便、アマゾンをよく使う人であれば当然入るべきなのがAmazonプライム。プライム会員になると動画が見放題になったりする特典もあり、僕は、お風呂で半身浴をする時間に映画やドラマを見てフル活用しています。書籍も月に10冊以上買いますし、日用品もアマゾンに頼りきっているのでAmazonプライムは非常にコストパフォーマンスが高いサービスと言えます。

取引先に競争させるのがアマゾンの戦略

アマゾンは本を仕入れる際に、各取次会社に様々な条件を提示してお互いを競争させ、最も良い業者から順位付けをします。そして、順位が上の会社から優先的に購買リストを渡すのです。たとえば、順位トップの会社がそのうち50%を納品すると、次に2番目の会社に残りの購買リストが回ってきて、そこが30%納品し、残りの20%が3番目の会社に流れるといった仕組みです。この仕組みを「カスケード」と呼びます。

アマゾンは、企業理念に「地球上で最も豊富な品揃え」「地球上で最もお客様を大切にできる企業」の2つを掲げています。そこで取次会社にはやや厳しい対応となるわけです。アマゾンと提携する運送会社などにも厳しいアマゾン品質は徹底されます。配送スピードはもちろん商品に傷はついていないかなど。アマゾンで商品を購入する人はクロネコヤマトなど品質に自信のある業者だけでなく、デリバリープロバイダというその他配送業者にも大手の品質を求めます。なので荷物の追跡が不便だったりするデリバリープロバイダはネット上で結構叩かれたりしていましたが、改善しつつあるようです。

日本では会社同士の付き合いにおいても、義理人情が通用しますが、アマゾンにはそういったものが通用しません。そのためアマゾンと取引を続ける限り、どんな会社も飽くなき競争に巻き込まれることに。徹底したマージンコントロールによって利益を増やし、人を雇い様々なテクノロジーを用いて拡大していくのがアマゾンという会社です。

物流への大きな投資

アマゾンでは物流が社内で非常に重要視されています。これは物流への投資額に表れています。2016年12月期のアマゾンのアニュアルレポートで連結決算を見てみると、費用の中でCost of Sales(原価)の次に大きいのがFulfillment(物流関連)です。売上高が1359億87百万ドル(15兆9431億円)に対してFulfillmentの額は、約176億ドル(2兆656億円)です(2016年12月28日時点為替レート 1ドル=117.24円で計算)。

一般的に見て企業は物流にどれくらい投資するものなのでしょうか?公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会の「2016年度物流コスト調査報告書」によると、日本の小売業の売上高に対する物流コスト比率の平均は4.85%。一方アマゾンはというと13%にも上ります。金額だけ見ても2兆円超が物流に投じられていることで、アマゾンにとって物流がどれだけ重要視されているかがわかります。

ニッチな商品をどうカバーするか?

全ての商品を在庫としておいておくのは難しいため、どうしてもニッチな商品については注文があってからサプライヤーに発注することになり、顧客の手元に届くまでのスピードが遅くなってしまいます。しかし、たとえアマゾン自身の販売分が在庫切れになっっていたとしても、他の販売業者からの出品の在庫があれば、顧客にとっては購入可能な状態になります。他の販売業者からの購入であっても、顧客の意識上では「アマゾンで購入した」ということになるので顧客の期待を裏切らずにすむのです。

書籍の購入などでもちょっとマニアックな書籍だと販売がアマゾンではない他の販売業者であることがたまにあります。それでもアマゾンのサイトから注文しているので顧客はアマゾンで買ったという意識に。

アマゾンを支える物流を中心とした様々な組織体系をつまびらかにする書籍。こうしている間にもアマゾンではさらなる利便性を求めて様々な施策が考えられていることでしょう。