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〈資本主義を革命的に書き換える「お金2.0」とは何か〉2.0のサービスは、概念そのものを作り出そうとするものが多いので、既存の金融知識が豊富な人ほど理解に苦しみます。あまりにも既存社会の常識とは違うので「今の経済」のメインストリームにいる人たちにとっては懐疑や不安の対象になりやすいといった特徴もあります。そして、それこそが全く新しいパラダイムであることの証でもあります。本書ではまずお金や経済の仕組みから、テクノロジーの進化によって生まれた「新しい経済」のカタチ、最後に私たちの生活がいかに変わるか、の順番に解体していきます。

お金が社会の中心に位置づけられた資本主義

最初は、「お金」は価値を運ぶ〝ツール〟でした。ただ「お金」が社会の中心になるにつれ、価値をどう提供するかを考えるよりも、「お金」から「お金」を生み出す方法を考えたほうが効率的であることに、気づく人が出てきます。人を雇用して製品を作って市場で売って「お金」に換えてまた何かを買うよりも、「お金」に「お金」を稼がせる方がもちろん楽です。現在の金融市場の大きさが、それを証明しています。価値を仲介するツールに過ぎなかった「お金」が、価値から分離してひとり歩きを始めた感じでしょうか。証券化などのスキームが生み出され、「お金」を金融商品として販売できるようになるとこの流れは加速していきます。

証券の証券化まで来てしまうともう実体経済の消費とはかけ離れたところで「お金」だけがぐるぐると回遊する状態に。価値を効率的にやり取りするために生まれたはずの「お金」はやがてそれ自体を増やすことに目的が移行していきます。資本主義における「お金」の重要性を考えれば必然的な流れだが、労働や生産を伴わないところでお金を回遊させ増やしていく様は、リスクを取らずに投資などには目もくれない僕からするとなんだかなぁと思ってしまいます。

ビットコインに感じた「報酬設計」の秀逸さ

ビットコインはそのリバタリアン的な思想や、そこで使われているブロックチェーンなどの技術面が注目されがちですが、私はビットコインの報酬設計の秀逸さに驚きました。ハイエクやゲゼルなど同様の思想は、昔から存在していましたし、分野は違えどP2Pや暗号技術もそれぞれは新しいものではありません。かつて、フリードリヒ・ハイエクという学者は「貨幣発行自由化論」を発表し、国家が中央銀行を経由して通過をコントロールすることは実体経済に悪影響を及ぼすとし、通貨の国営化をやめるべきだと主張しました。現代では考えられないことですが、当時は国家が通過をコントロールすることは常識ではなかったことがわかります。

市場原理による競争にさらされることによって、健全な安定した通過が発展するという考えは、ビットコインの立ち位置と似ているところがある。ビットコインが他の学術的思想や新技術と違うのは、経済システムに参加する人々が何をすれば、どういった利益が得られるか、という報酬が明確に設計されているという点です。マイナーや投資家などを〝利益〟によって呼び込み、ブロックチェーンなどの〝テクノロジー〟で技術者の目を引き、リバタリアン的思想で社会を巻き込み、システムを強固なものに。

テレビなどでも盛んに取り上げられるようになったビットコインだが投資目的以外では海外への送金の際手数料が激安という点ぐらいしかメリットがないようにも感じます。未だにビットコインが使えるサービスや店舗は少ないしこれから劇的に増えると思っているのは、ビットコイン所有者だけのような気もします。そりゃ自分が持っていれば、劇的な価値の上昇やバブルはこれからだといって煽りたくなるのもわかるが、オフラインでお金を管理している銀行と違いサイバー攻撃の的になりかねないビットコインはちょっと怖いです。これも持っている人からすれば、盤石の布陣のセキュリティだと言いたくなるでしょうが。

勝手に拡大するサービスを作るには?

フェイスブックやツイッターやインスタグラムなどのSNSは、直接的にお金のやり取りをするサービスではないのでわかりにくいですが、非常によくできた経済システムと言えます。「いいね」や「RT」はSNSという経済の中では「金銭」ではなく「承認」という欲求を満たすための装置であり、ユーザー間でやりとりされる「通貨」のような役割を担っています。拡散によって増えていくフォロワーは、貯金のように貯まっていく「資産」に近いです。

「いいね」「フォロワー」「視聴者」の数は可視化され、他人と比較することができ、業界や趣味ごとのヒエラルキーも明確になっている。SNSは経済システムに必要な5つの要素(①インセンティブ、②リアルタイム、③不確実性、④ヒエラルキー、⑤コミュニケーション)を完璧に満たしているのです。フェイスブックやツイッターが最初からこのような要素を盛り込もうとして作り上げられたかどうかはわからないが、人々が何を欲しているかを見逃さなかった嗅覚はすごいというしかない。

お金、テクノロジー、価値主義とは?と続き、お金から解放されるにはどうすればいいかなどの具体的生き方を提示。加速するテクノロジーに人類の進化をのせて描かれる「お金2.0」の世界は僕たちの生活にどのような変化をもたらすか。少し覗いてみませんか?