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我が国の成長を支えてきた人口増加と分厚い若年層の存在はもはや期待できない。スーパー・メガリージョン構想は、人・モノ・情報・資金の国内外の対流を引き起こし、交流連携のダイナミズムを現代において現実のものとして、効果を全国へ波及させることを目指している。こうしたテーマを名古屋目線で見ていこう。

スーパー・メガリージョン

平成29年現在、都市圏の人口規模で東京は世界第2位、大阪は15位、名古屋は32位である。それが合体して、人口・経済規模にして世界最大の広域都市圏、スーパー・メガリージョンが誕生する。10年後の名古屋・品川間の開業は、その大きな一歩である。

東京、大阪、名古屋の都市人口の合計は6,810万人となり連結すれば広州の4,860万人を抜き去ることに。とは言っても連結すればの話だが。名古屋では公共交通機関の乗り換えなどの便が悪く、自動車へと移動手段が移っているので、リニア開通を機にこうした他の公共交通機関の利便性をアップさせることも求められる。スーパー・メガリージョン構想で沿線圏域を一つの巨大な都市圏として機能させる目的の一つとして、東京への一極集中の是正が挙げられる。

東京は他都市と比べ出生率が低く、東京に人を集めて消しているのでは日本はもたない。災害時のバックアップ機能を持った都市を作ることにより、一極集中のリスクを分散し、強靭な国家を形成するのにも役立つ。東京に諸機能が集中したことにより、人口過密が起こり地価の高騰を招くなどの弊害も起きている。東京圏への依存は高コスト構造を生み出しているとも言える。

コンパクト化の課題

都市計画の専門家の間では「線を引け」という意見は強い。スーパー・メガリージョンの圏域にも過疎の集落は多いが、そうしたところに住む人たちに街の中心部に近いところに住み替えてもらえば、行政にとって道路や橋、上下水道などの社会資本の整備が不要になるし、住人は高齢になっても便利な生活が楽しめるという趣旨である。

都市計画を考えるときある一定のラインで線を引きインフラなどを思い切ってストップさせるというものだが、過疎で不便でもその方が暮らしやすいという人が一定数いることには配慮が必要だ。いくら便利になったところで、それが豊かな暮らしかというとそうでもなかったりするからだ。都市部に住み替えても従来の暮らしとの比較で暮らしやすいと思えるようなサービスや人とのつながりなども提示していかなくてはならない。山間部で長いこと暮らしてきた人の中には都会での暮らしがストレスになることも考えられる。そうしたギャップをどのように埋めていくのかが課題となる。

新しいライフスタイルを生み出す「中間駅インパクト」

たとえば、住居を園域に構え、リニア駅を使って東京圏や名古屋圏、大阪圏の中心部に勤務することが可能になる。中津川市は、現在では名古屋駅から中津川駅まで特急で約50分かかり、名古屋に職場がある人にとって通勤するかどうかの限界地域となっているが、リニアが開通すれば名古屋駅へは13分である。名古屋駅から甲府市へもこれまでは長野県・塩尻駅まで特急で行って乗り換えるしかなかったのが、リニア開業により40分(現状約180分)となり、甲府市から品川へは32分(現状133分)である。飯田市から品川へも49分(現状240分)と約5分の1に短縮され、名古屋へは、現状は高速バスで約120分のところを、品川よりもさらに短時間の23分で着いてしまう。豊かな自然に魅了されて、いいだを居住地とし、そこから東京や名古屋に通う人々が集結するかもしれない。

移動時間の短縮により様々な働き方、住居の選び方が可能になり新たなライフスタイルを生み出すことは間違い無いだろう。しかし高額な交通費負担が会社にのしかかるので、それを払ってでも雇いたいと思われるようなビジネスマンでなければならない。移動時間の短縮でメリットがあるのは何も通勤だけでは無い。中間駅でも観光に力を入れれば集客やインバウンドにも繋がるだろう。最近の若者は物消費からコト消費へと関心が移っているので、PR次第では大いに期待できるだろう。

若い女性の流出

最近の若い女性の流出の原因は何だろうか。考えられるのは、女性にキャリア意識が芽生え始めていることと、それにもかかわらず名古屋には女性が活躍できる場が少ないということである。

名古屋の主軸産業であるものづくりの現場は、多くが工場というイメージが先行し、働く女性にとってやさしくないという地域イメージがもたれているのではないおだろうか。若い女性はそういったこともあり、東京圏や大阪圏に仕事を求めているのが現実だろう。これからは企業の本社誘致など積極的に行うことで労働力の流出を抑えたいところだ。

名古屋には日本史に燦然と輝く戦国武将三傑(信長、秀吉、家康)などに加え前田利家や加藤清正など江戸時代の諸大名のおよそ7割が愛知ゆかりという強みがある。「サムライ」をインバウンド観光に繋げればまだまだ潜在能力はあると思われる。リニア開通後、大阪まで伸長する期間にどれだけPRできるかに命運がかかっているように思われる。