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最近、新聞などの事件報道の記事において、「責任能力」という言葉を見かけることが多くなった。殺人などの重大事件に関しても、加害者が、「心神喪失」と認定され、刑事的な処罰を受けないことがしばしば報道される。そもそも精神障害者の刑がなぜ減免されるのか?そういった疑問を解消していこう。

刑法39条「心神喪失」犯罪とは

六月二一日朝、出勤途中の女性が、精神病歴があり、精神病院の外泊許可を得て職探し中の男(四〇歳)にいきなり後ろから突き落とされ、電車にはねられ死亡している。朝のホームは、まだラッシュアワーの時間帯で数百人の客が列をつくって電車を待っていた。男は酒に酔いながらホームを歩き女性をからかっていたが、電車が入ってくると、「1人殺すも二人殺すも同じだ」とつぶやきながらその女性を突き落としたというのである。

これによりホームはパニック状態。犯人は「人権尊重」のため名前は伏せられAという仮名で報道された。この男はこれまでに17回の検挙歴があり、前科も12犯だったのにである。誤解して欲しくないのは、こういった報道があるたびに精神鑑定が行われ、被疑者が「心神喪失」と判断され無罪放免となるには意外とハードルが高いということ。ほとんどの精神疾患患者はちゃんと理性も持っているので、妄想状態やパニック状態になっても人命を脅かすような危険な行動に出る人間は稀なのだ。

僕自身、統合失調症の病状が一番悪かった時期、車を運転していて前を走っているタクシーの運ちゃんの声(実際には幻聴なのだが)が聞こえた。「俺についてこい、ついてきたらいいこと教えてやる」という声が聞こえタクシーの後ろに車をつけ尾行しとことがある。すると、タクシーは自動販売機のそばで停車。運転手さんは、自販機で飲み物を買い去っていった。その自販機で僕も飲み物を買おうと近づいたら、普通の自販機より価格が安い自販機だった。「いいこと教えてやる」ってこのこと?と思ったことが。

そのほかにも幻聴で「今前を歩いている人は目が見えないのでついていって強盗に入り、金を盗め」と聞こえてきたこともある。当然そんなことは犯罪なので理性でその衝動は抑えることができる。統合失調症で障害者の僕でもそれなりのリミッターはかかるので、事件を起こして逮捕されるような事案と精神病患者をイコールで結ぶような報道は気分が悪い。

慣例において犯行時にどのような精神状態であろうと責任能力なしとなる不思議

「慣例」おいては、統合失調症、あるいは躁うつ病と診断されれば、犯行時どのような精神状態であろうと、責任能力は全くないという判断が下されることになる。ここで述べられている診断名は従来診断のため、現在用いられているICD-10などによる病名とは若干の違いがある。多少補足を加えると、第二項に述べられているのは器質性の精神疾患及びアルコール関連疾患である。第三項では、パーソナリティ障害と神経症について記されている。これらの精神障害に置ける責任能力の考え方は、現在と大きな差はない。しかしながら、第一項に関しては近年「慣例」に関して否定的な見方が次第に強くなってきている。例えば統合失調症と一言でいっても、その病状は個人個人千差万別である。精神病院に長期入院しているケースもあれば健常者と変わらない生活を送っているケースも少なくない。したがってここの症例ごとに、犯行時の精神症状や行動を十分に検討し、責任能力の有無を検討すべきであるという考えが現在では優勢になってきている。

精神疾患者の起こした事件が報じられるたびに、僕のような統合失調症患者の世間的な目が厳しくなるような気がするので、報道の際は病状は千差万別であることをちゃんと伝えて欲しい。中には犯罪を犯す人もわずかだがいるのも現実だが、多くの人は幻聴や幻覚、妄想、に取り憑かれても理性でなんとか踏みとどまることができるのです。ちなみに精神病院に入院中、自殺未遂や他人に対する暴言や暴力、暴れるなどすると、すぐに隔離病棟の中でもさらに隔離された内側からは開けられない仕組みになったいわゆる〝独房〟に入れられます。僕の場合は、初入院の時は入院を頑なに拒んで暴れたため、医療保護入院という措置が取られ〝独房〟入り。その後2回目の入院でも、幻聴に惑わせれ持っていたCDを割ったことにより、鋭利な割れたCDで自殺の可能性があるとしてこれまた〝独房〟に。貴重な経験をしました。

池田小事件

加害者の宅間は精神科に通院歴があり、措置入院患者として入院したこともあった。すでに彼は高校を中退したことにより、不安や倦怠感を訴え、精神科に通院を開始している。一九八四年、婦女暴行事件を起こした宅間は、「幻聴が聞こえる」などと精神疾患を装い一時精神科に入院したが、責任能力はあると判断された。

ちゃんと診断すれば精神疾患を装ってもバレます。責任能力という観点から見れば、多くのケースでは、責任能力ありとなるのでなないかというのが実感です。入院や通院歴があろうとも犯罪を犯せば罪に問われるということが広く広まれば、精神病患者だけが、「心神喪失」で無罪になるだろうという誤った認識はなくなるのではないかと思います。