book00467

昨今のビジネスシーンで注目されるテクノロジーのひとつが「人工知能(Artificial Intelligence)」です。人工知能はついに囲碁で人間を超え、さらには、医療や勉強や、作曲までもするようになってきています。人工知能とロボットを組み合わせることで何ができて、何ができないのか。そして、今後どのように進化するのか。本書は、人工知能のしくみと活用を、企業の導入事例をまじえてやさしく詳説。テクノロジーとビジネスの最前線を提示する、人工知能解説書です。

人間と同じように学習する機械学習

犬の画像を数千枚用意するとします。それをニューラルネットワークに「犬」ってこれだよ、と指定して与えます(読み込ませます)。業界用語では「ニューラルネットワークに画像を喰わせる」と表現することもあります(少し乱暴な印象ですが、表現としてはわかりやすいのです)。すると、ニューラルネットワークはひたすら画像を解析して画像の特徴を抽出します。そのうち、それが蓄積していくと人間と同じように犬はどんなものなのか、という「特徴量」を算出してその画像に犬が写っているかどうかを識別できるようになります。

学習したことで、犬と猫の特徴を学習したニューラルネットワークとそのアルゴリズムが出来上がります。そこで「犬」と「猫」の画像を与え、分類することを命じるとその画像が「犬」か「猫」かを判定することが可能になります。この技術は特徴を抽出するためには、人間の識別能力よりも多くの素材を必要とするのではないかと思う。人間は子供の頃犬や猫を種類別に10匹程度覚えれば経験則でそれが犬であるか猫であるか識別できるようになる。見たことのない種類の犬や猫でもそれがどっちであるかなんとなくわかるのである。AIでもそれは可能だが、覚えさせるのに多くの画像データが必要となる。こういったAIの特性から、大量のデータを蓄積している企業などではAIの活用により恩恵を受けられるが、元となる〝喰わせる〟データがない企業ではまずデータベースを構築するところから始めないとならない。

医療分野で活躍するWatson

Watsonは「書籍約100万冊(約2億ページ分)のデータをより分け、情報を解析して3秒以内に正確な分析結果を導き出すことができる」と解説しています。この技術を使って、Watsonは医師や研究者、看護士、製薬関連など、医療に従事する人たちの質問に対して、最新で適切な答えを瞬時に提供するシステムを目指したのです。

医療関連の文献や論文は膨大な数があり、5年で2倍になるとまで言われています。それに加え病院では患者のデータが日々蓄積していきます。これだけ多くのデータがあると人間が全てに目を通すのは現実的でない。そこでWatsonのようなスーパーコンピュータが最適な回答や予測を導き出してくれれば大きな成果となります。

病院などの患者データや製薬会社の新薬開発に関するデータは極秘機密データであることから、病院や創薬会社は何も知識のない赤ちゃんの状態でWatsonを運用し始めます。Watsonは全知全能の知識者ではないところから、学習によって精度の高いMRIなどの画像診断などが可能になります。そしてWatsonの特徴の一つに、出した回答に「自信度」(確度)をつけて提示できるというのがあります。また答えは一つでなく複数の回答に自信度ランキングをつけたものを提示することも。さらには、「糖尿病の病歴は?」「親族がかかった病歴は?」などと質問を加えることで別の併発している病気の可能性を探ることも可能となります。

メール回答の文面をWatsonがアドバイス

メールの問い合わせ件数が増えてくるとさまざまな問題が起こり、業務を煩雑にします。メールの回答パターンが増えることはもちろん、キャリアの浅い(スキルが低い)担当者は適切な対応ができずに顧客との関係をこじらせてしまったり、CC(同報送信者)が増えることによって、メールの件数が雪だるま式に増え、返信すべき担当者が不明瞭になって回答の出し忘れが発生したりと、数々の問題のもとになります。

こういった問題を解決すべくWatsonは、例えば自動車保険のサポートデスクを例にすると「タイヤがパンクした」「車の空気が抜けた」「輪っかがペチャンコだ」「バーストした」などさまざまな表現をしてくるユーザーに対応しなければなりません。しかしご安心を、Watsonは言い回しの違う同じ内容の質問を認識する能力に優れているので問題ありません。Watsonが適切だと判断した内容を、サポートデスクの担当者のパソコンに表示することで、担当者が確認。それが正しいと判断したなら簡単な操作で送信し回答業務を行うことができます。

人工知能を持ったロボットが銀行内を案内し、AIによりMRI画像をチェックし異常を発見。セキュリティーの世界でもAIによる監視により異常を検知することが必須となっている。人工知能を利用し、ユーザー一人一人の好みにあったファッションやお酒などを提案しコーディネートしてくれるソムリエ的アプリなども登場しています。こういったものを活用してみるのいいのかとも思うが、反対に自分の興味外のものを排除してしまう状況になってしまうのが欠点かもしれない。人工知能の今がこういったものに疎い人でもわかるよう書かれた入門書です。