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地球は「水の惑星」と呼ぶにふさわしい天体だ。しかし、地球の水の「起源・分布・循環」という三つの謎は、大きな未解決問題として残されている。本書は、水がこの惑星にどんな影響を与えてきたかの謎に、地球誕生からプレートテクトニクスまで、さまざまな角度で迫る。「水」は、地球史をいかに語るのだろうか?地球科学を俯瞰する、最良の入門書。

隕石と太陽系の化学組成

そもそも、地球のように比較的よく研究されている惑星にしても、深部の化学組成には不明な点が多いのです。そこで、多くの科学者は、惑星の化学組成からではなく、隕石の化学組成から太陽系の化学組成を推定する方法をとりました。隕石は太陽系ができた当初の状態を記録しているので、その化学組成から太陽系の化学組成が推定できるかもしれないのです。

時折、宇宙から地球に落ちてくる隕石を調べることで様々なことが分かるという。岩石や金属鉄からできた隕石は、小惑星帯から来ていることがわかっている(少数だが、火星や月からのものもある)。小惑星帯とは火星と木星の間にある、たくさんの小さな固体物質が帯状に分布する広大な領域だ。隕石のできた年代を測定してみると、どれも地球上の岩石よりも古いことがわかる。隕石の多くはコンドライト<石質隕石(ケイ酸塩鉱物を主要組成とする隕石)のうち、コンドルールという球粒状構造を持つ隕石>だ。宇宙にはこのように地球を構成する岩石やなんかよりも圧倒的に古い物質が漂っている。それを丹念に調べ研究し太陽系の化学組成を理解しようと日々努力している人たちの探究心には頭がさがる。

地球・金星・火星の大気の進化〜水の相図から読み取る

地球の場合、大気が薄い初期の段階では水は水蒸気になりますが、少し大気が厚くなり圧力が増すと、液体の水(海水)ができます。地球の大気にはある程度温室効果ガス(水蒸気)が存在するので、その温度は大気のない場合に比べて上昇します。しかし、地球ではほとんどの水は液体の状態にあり、大気中に水蒸気は少ししかありません。そこで温度上昇の大きさは金星に比べて小さく、海水が存在し続けます。そのため、金星とは違って、高層大気から逃げる水素はわずかです。火星ではずっと低温から出発します。この場合、水はほとんど蒸発せず、氷のままです。そのため、火星の大気には少量の炭酸ガスがあるだけで、温室効果は弱く、火星の大気は地球と比べて低温であることが予想されます。実際に、火星の平均表面温度はマイナス55℃と知られています。

こうやって、水と炭酸ガスの相図に基づいた簡単なモデルで、色々な惑星の表面における海洋の有無、大気の組成と構造を説明できる。各惑星の大気は、最初の表面温度のわずかな違いによって、違った真価をたどり現在の大気の状態となり海洋を持つようになったり、失ったりしたのだ。表面の海洋に加え、地球では、内部にも水が存在する。地下水はもちろん、もっと深いところでは地殻の岩石に染み込んでいます。

プレートテクトニクスと水の循環

プレートテクトニクスが起きている場合には、中央海嶺の下で暖かい物質が上昇していきます。上昇に伴って圧力が低下するので、その物質の融点は下がり、岩石が一部融解しメルトができます。中央海嶺の下での部分融解は、深さ70km程度より浅い部分で主に起こります。融解が起きるともともとマントル物質に入っていた水の大部分はメルトに入り、地表(海底)に到達します。とけ残りの岩石からはほとんど水がなくなり、この硬い岩石が海洋プレートになります。

海洋プレートは海溝で地球内部に沈み込みます。その上にあった水に富む物質も地球内部に戻っていく。こうして水を含んだ海洋プレートが地球深部に沈み込んでいくと、その水はマントルに戻ります。深く染み込んだ水は容易に脱水されないので、プレーとともにマントル深部まで運ばれ、地球規模での水の循環に大きく寄与するのです。水をある程度含んだ海洋プレートが沈み込んだ時、水がどこまでマントル深部に運ばれるかはわかっていません。この水のかなりの部分は、マントルの浅いところでプレートから脱水し、火山を作りマグマとともに表面へと戻る。火山の多くはこうしてできたものです。

海水量の変動の歴史

最近6億年の海水準変動を平均すると、1億年で約40〜60mというペースでの低下傾向が見られます。現在の海の平均深さが3729mですから、1億年かけて約1から2%というゆっくりとした低下です。この6億年のあいだ、海水量の変化はそれほど大きくなかった、と言えそうです(この論文で著者はそう主張しています)。しかしよく見ると、1億年くらいの時間では、海水準がより激しく高くなったり低くなったりしている傾向も見えます(500m/億年程度)。もしこの大きな変化が数億年間続けば、海水は完全になくなったり、大陸が水浸しになったりするはずです。

この海岸線の位置の急激な変化の原因はよくわかっていませんが、大陸や沈み込み帯の分布が変わったことと、海水量の変化が挙げられるのではないかという。

水の惑星である地球の水の「起源・分布・循環」からこの惑星のことを理解するのに適した入門書となっています。