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子どもの頃にはふつうの子ができることができず、いじめられて、泣いてばかりいた。失敗、挫折、失恋の体験も人一倍多いという著者。あれこれ試して小さな成功と挫折を繰り返しながら、10年かけて日常生活で幸せを感じられるようになったという。その道程を振り返ると、「よく抜け出せたものだ」と‥‥。ちょっと選択をまちがえたら、あのまま暗い世界にいたのかもしれないと想像すると、ぞっとする。そこで私は、かつての著者のように悩んでいる人に「幸せを感じられるようになる方法」をこの書籍で紹介。

目標を実現した後、去って行く高揚感と新たな夢

「ふだん幸せでない人は、達成すれば永遠の幸福を得られるような気がするから大きな夢を求めるのでしょうね。そして高揚感が去ったら、またそれを求めて次に大きな夢を抱くのでしょう」ビーンさん自身は、「月に行けば幸せになれる」とは、考えたこともなかったそうです。彼は、飛行機の美しさに惹かれてテキサス大学で航空工学を学び、空を飛びたくて海軍のパイロットになり、飛ぶのは好きだけれど戦うのが嫌いだっったので戦闘しなくてもよい(が、非常に危険な)テストパイロットになり、職場で知った新しい職業の「宇宙飛行士」の方が面白そうだったから志願したというのです。

月に行ったのは素晴らしい体験だったが、行けなかったとしても他の幸せでいる方法を見つけたと思うという。そんなビーンさんはNASAで要職につくことはなく49歳で引退。80歳を超えたビーンさんが今でも幸せを感じられるのは30年前の選択のおかげだったのだ。常識のプレッシャーに負け、やりたいことを諦めたりする必要はないという好例だ。

メディアが吹き込む理想像は偶像でしかない

メディアは「男性は高学歴で高収入、女性は美人でスリムでなければならない」と伝え、周囲にはピアノの演奏ができる人、マラソン大会に出場する人、料理が得意な人がたくさんいます。知り合いからは、結婚の通知やお子さんが有名大学に入学したことを知らせる年賀状が届きますし、フェイスブックやツイッターには、完璧な料理、印象的な海外出張、エキゾチックな家族旅行、有意義なボランティア活動の写真であふれています。インターネットの普及によって、手に入る情報量が増えているので、才能がなくて、努力が足りなくて、何も達成していないのは自分だけのような気がしてきます。

親や教師、同級生、同僚、上司など身近な人は、あなたとそう行った人たちを比較。そして、「なぜ〇〇のようになれないのか?」などと言われた日には自己肯定感にトドメが刺されます。そんな、窮屈感に苛まれている人にはSNS断ちをオススメします。一日にSNSに縛られている時間を合計すると、2時間にも及ぶ人が多くいることがわかっています。その2時間は読書など他の良い習慣に置き換えることで随分と生活にハリがててきます。それと同時にどうでもいい他人のランチの画像を見て〝飯テロ〟にあうこともありませんし、海外旅行ではしゃぐ写真を見て舌打ちをすることもなくなります。いきなりSNS断ちをするのが無理でも、チェックする回数を1日3回程度にするだけでも十分SNSの恩恵に授かれます。インスタグラムの綺麗で豪華な写真を見るのもいいいですが、上を見ればきりがないのでほどほどに。

嫉妬や中傷が混じった雑音を聞かない

北京オリンピックで8個、通算で18個のオリンピック金メダルを獲得した競泳のマイケル・フェルプスは、試合前大きなヘッドホンをつけて音楽を聞いていました。有害な雑念を消してレースに最適なマインドセットにするためです。ビジネスで成功している人も、最良の結果を得るためには、自分を信じ、持っている能力を最大限に発揮するしかないことを知っています。そして、自分の選択や能力を疑う迷いが成功を妨げることも知っています。ですから、嫉妬や中傷が混じった雑音を聞かない努力をしているのです。

トップアスリートではないが、僕も家から出るときは必ずヘッドホンをつけて歩きます。町の人の声が気になる性分なので、それをシャットアウトするためです。そうやって移動時間を自分の好きな音楽で満たすことで、病気が発症してから苦手となった外出も少しづつできるように。未だに初めて行く場所には警戒感を持ってしまいますが、周囲の人達のどうでもいい会話に惑わされることは少なくなりました。

旅そのものが旅の報酬である

アップルの創業者スティーブ・ジョブズの有名な名言に「旅そのものが旅の報酬である」というものがあります。禅から学んだ考え方のようですが、「目標を達成することではなく、その過程に意義があるのであり、それが報酬だ」という意味です。

僕の場合だと、ブログで報酬を得ることではなく、ブログ記事を書くために始めた、読書そのものに意味があるということだろう。実際本を読む習慣がなかった(月に1冊読めばいい方だった)僕が1年間毎日休まず読書を続けブログ1周年を迎えられたのもその過程で得られた知識で満たされるという報酬が大きいだろう。

僕や著者のように「10年かけて日常生活で幸せを感じられるようになった」という幸せの見つけ方がわかるようになる書籍でした。鬱や引きこもりなどから抜け出したい人にも読んでほしい1冊です。