book00404

いま、学ぶべきサイエンスとは何か? 「物理」「化学」「生物」「医学」「地学」「環境問題」─6科目のエッセンスを講義形式で明快に説く、池上彰初の科学入門。核兵器から原発、水素エネルギーから再生医療、首都直下地震から地球温暖化まで、ニュースの核心がスッキリ分かる決定版。科学とは「疑うこと」から始まります!

降水率30%の意味を知っていますか?

私たちは毎日、「科学的なものの見方」と向き合っています。あなたは朝、家を出るとき、ネットやテレビの天気予報で「今日の降水確率」をチェックして、傘を持っていくかどうか判断するでしょう。そのとき、「降水確率三〇パーセント」とあったとします。この数字は何を意味するのでしょうか。

その答えは、同じ天気図で100回のうち30回雨が降っていれば「降水率30%」ということになる。ならば同じ天気図(マッチするもの)で120回中42回雨が降っていれば35%ともっと細かく刻めるはずだと思うのは僕だけだろうか。30%と35%ではだいぶ印象が変わってくる。ところで皆さんは降水確率何パーセントから傘を持って出かけるだろうか?僕は家を出る時点で降っていなければ70%以上でないと傘を持たない。たとえ70%以上であっても持ち歩くのに邪魔になるので折り畳み傘だ。そしてお店やなんかに入って買い物をしているうちに雨が止むとかなりの高確率で忘れてしまう。家に帰った後忘れたことに気づくがビニール傘なので取りに行くのも面倒臭くて放置してしまう。

医学の進歩の裏で治療を受けられるか否かは金次第に

医学の対象も、どんどん小さなものになっていきます。すると、遺伝子の研究もまた医学に応用されていくことになる。山中伸弥教授が作ったiPS細胞によって、医学は再生医療という夢の治療法にたどり着こうとしています。しかし、夢の治療法が実現しても、問題はみんながその恩恵にあずかれるのか、ということです。一握りの金持ちだけが再生医療を受けられるとしたら、それは社会問題になってしまうでしょう。新しい科学技術が発見されると、それをどう受け入れるのかという新たな課題が生じます。これも様々な科学に共通して言えることです。

新しい医療技術や科学技術。最先端のものを使いたい人にはそれなりの負担をしていただき(クラウドファンディングなどの投資や寄付)その技術が普及してきた段階でかかる費用を下げていき庶民でもその技術を享受できるようにしていく。iPS細胞によって再生医療を受けたいと思うなら今から山中教授の『iPS細胞研究基金』に寄付をしろと言いたい。普及段階になった時にはその寄付が社会貢献にもつながるのだから。iPS細胞には大きく分けて三つの活用法がある。一つ目は再生医療、二つ目は難病研究、これはiPS細胞を使い難病の細胞を作ることで、そのメカニズムを精密に研究できるようになる。三つ目は治療の難しい病気に対する薬の開発。

地球に太陽を作る核融合発電

水素を用いた究極のエネルギーとして期待されているのが核融合発電です。核融合とは、物理の章でお話しした核分裂とは反対に、高速で飛び回る原子核を衝突させて、原子核を融合させることです。そのとき、巨大なエネルギーが発生する。そのエネルギーをなんとか取り出せないかと、現在世界中で核融合反応の研究が進んでいます。

私たちに身近な核融合は、太陽の活動です。水素の原子核四つが融合して、ヘリウムの原子核が一つできている。この核融合反応で太陽は光り輝いている。核融合発電は、太陽の中で起きている核融合反応を人工的に起こそうとするもの。そのとき燃料となるのが、重水素とトリチウムでどちらも水素の同位体(同じ元素だけれども、中性子の数だけが異なる原子)だ。火力による二酸化炭素の排出やリスクの高い原発に変わり、水素や核融合に目をつけ新しいエネルギーを今、生み出そうとしているわけだ。

生命は宇宙からやってきた?

宇宙のどこかで誕生した原始的な生命や細胞が、隕石に包み込まれて地球にやってきたのではないか、ということです。もっとも、隕石の中にあったのが本当にシアノバクテリアの化石なのか、疑問視する声もあります。しかし確率的に考えれば、地球だけで生命が生まれる確率は低くなります。むしろ、広大な宇宙のどこかでアミノ酸が生まれ、タンパク質になる可能性の方がずっと高いでしょう。

そうなると生命は宇宙空間で生きられるかという疑問が起こる。ですが既に生きた事例があります。クマムシを人工衛星に乗せて、宇宙空間にさらす実験ではクマムシは岩石の結晶のような状態になって生き延び、地球に帰ってからは元どうりの姿になって普通に生き続けた。そうなってくると宇宙空間でも生きられる生命体が地球に降り立ち、元の姿に戻るなどして地球にやってくることも考えられる。元来そうやって地球に生命がやってきたのかもというロマンあふれる話となる。

トランプ大統領をはじめとするアメリカ共和党議員の大半は、「地球温暖化は起きてない」と主張しています。石炭産業の復活を狙っての発言だがそういった発言の根拠がどこにあるのか謎だ。科学は疑うことから、理系の話を文系にも理解できるように話すことができるコミュニケーターを育てていくことも今後の課題の一つだろう。