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長谷川慶太郎氏と田原総一朗氏が2018年の世界を予測する。アメリカ大統領選挙後の世界は果たしてどうなるのか。世界はリベラリズムからポピュリズムに流れが変化。リベラリズムは人類の理想ですが、現実とのギャップが激しくなってたくさんの矛盾を抱えるようになり、今回、アメリカでも多くの国民が嫌気を示した。イギリスのEU離脱や、ドイツで行われた地方選挙でメルケル首相が自身の地盤で大敗したことにも通づる。ポピュリズムが支配する今後の世界はどうなっていくのかを見ていきましょう。

アメリカはTTPをやらない

田原 アメリカがTPPを認めなくても、日本はTPPをやるのですか。

長谷川 そうです。それで安倍首相がトランプに会って「トランプさん、あなたは大統領になったらTPPをやめると言いました。しかし、自由貿易体制がアメリカ経済をはじめ世界経済発展の礎となってきたのに、それを否定する判断をするとは、いったいどういうことですか。説明してください」と言ったら、トランプは困るわけです。

保護貿易が世界の経済発展を妨げるというのには頷ける。生産者を過剰に保護することで消費者は不当に高い商品を買わされる。消費者は品質・コストパフォーマンス共に高いレベルの商品を求めているわけで、それを妨げる関税なんてないほういい。そうなることで、生産者はマーケティングにも力を入れるようになるしの技術向上にも一役かう。

離婚率が高くなったアメリカ

田原 どうして離婚率が高くなったのですか。

長谷川 いろいろな理由があります。男女雇用機会均等法で奥さんがかなり高収入を取れるようになった。女性の立場が強くなったことがまず挙げられます。アメリカで男女の賃金格差は1です。

田原 1というのは、どういうことですか。

長谷川 男と女の給与水準がほとんど同額という意味です。

離婚を切り出すのは力を持った女性の方かと思いきや、強くなった女性に疲れた男性側から離婚を切り出すのだそうだ。アメリカでは台所が小さくなり今までの5分の1の狭さの物件が増えているという。これは忙しくて家で料理を作らなくなり、テイクアウトで夕食を済ます共働き層が増えたことによるもので、台所にはビールを冷やす冷蔵庫しかないことも。しかも家の掃除は低賃金で人を雇って来ればいいという考えで、女性の家事負担は劇的に軽くなりました。共働きが増えて女性との賃金格差がなくなれば、こういった動きは日本でも進むのだろう。

2017年ヨーロッパは大激変する

長谷川 いずれにしてもイギリスのEU離脱は、ヨーロッパにおける戦後、70年の歴史の否定を意味します。この離脱をきっかけにして、2017年は怒涛の如くヨーロッパは変わるでしょう。まずフランスの大統領選挙で現在のオランド大統領は負けます。また、ドイツのメルケル首相も選挙で負けて政権が崩壊するでしょう。続いてスペインも現政権は変わると見ています。そしてEUは崩壊へ向かうのです。よく言われるEU離脱のドミノ現象が起きます。

EU離脱の影響でイギリスの金融界は打撃を受ける。ユーロの決済拠点はロンドンからドイツのフランクフルトへ移り、それを背景にシティで数千人という金融マンのクビが飛ぶことになることが予想される。イギリスの金融市場は単なるローカルの市場になり、ロンドンシティはヨーロッパの金融市場の中心ではいられなくなる。シティは貿易の決済センターでなくなる。それだけEU離脱のインパクトは強いのだ。

世界の流れはリベラルからポピュリズムに変わる

田原 マスコミは、トランプはポピュリストであるとそう言ってます。

長谷川 いや、逆なのです。どうしてトランプが急に伸びたか、アメリカのマスコミは誰も説明できていません。今回はポピュリズムという流れが根底にあって、その上にトランプという小さな船が乗っかっただけなのです。だから流れは変わらないわけです。

田原 流れはポピュリズムですか。

長谷川 ポピュリズムの方向しかない。

田原 世界は今後、ポピュリズムを中心にものを考える?

長谷川 そうです。自分中心に考えて、自分中心に行動をする。

田原 日本ではどうですか。

長谷川 日本ではすでにポピュリズムの流れに入っています。最近のスマホを見たらよくわかると思います。3年前は予測できませんでした。

最近、電通の若い女性社員が自殺して問題になりましたが、これも背景には、デフレ下で企業の売り上げが伸び悩む中、スポンサーがうるさいという側面があります。「広告を出しても思うように売り上げが伸びないのは広告が良くないからだ」と詰め寄る。当然社内の空気は悪くなり、その要望に応えるべく、長時間労働を余儀なくされる。労働時間が長すぎると問題になるので、少なく申告する社内風土が完成する。

在日米軍撤退はありえない

田原 ところでまず聞きたいのは、トランプが勝利したことで、日本の安全保障問題はどうなりますか。トランプは日本や韓国からアメリカ軍を引き揚げる代わりに核武装化を容認する、あるいはその間の費用の負担を要求していました。在日米軍の経費など、日本に「もっとカネを出せ、出さないと在日米軍は引き揚げる」とも言っていました。

長谷川 そんなことできるわけがない。トランプも日米安全保障条約をベースにアジア地域全体の安定を図っていくものと見られます。そもそも、在日米軍を撤退させることは不可能です。もし、仮に日本からアメリカ軍が撤退したら、アメリカ西海岸までの軍の勢力範囲は小さくなります。

アメリカ海軍力の半分は第七艦隊が保持していて、この第七艦隊は日本抜きでは活動できない。横須賀の第六、佐世保の第四と呼ばれているこの二つのドックがなければ原子力空母はドックに入れません。日本から第七艦隊を引き揚げたら、アメリカはアジアでの拠点を失うことになる。日本は安全保障の面において自己抑制している。日本が核兵器を作ろうとしたら、3ヶ月で量産できる。にもかかわらずそれはやらない。大した自制だ。

トランプ新大統領はポピュリズムを満足させながら、これからのデフレ世界を生きていく知恵を絞り出さなくてはならない。そこに希望を見出すことがこれからの世界を形成するヒントとなるだろう。