book00210

UFO、UMA、超能力、心霊写真、ピラミッドパワー、ムー大陸にアチランチェス大陸、オカルトブームの発祥と変遷をたどり、日本で〝オカルト〟と呼ばれているものの実態に迫る。社会現象としてのオカルトブームが起きた戦後日本。ネット時代の今、個人はオカルトの自由ともいえる状況を謳歌している。最近では2045年シンギュラリティなども一種のオカルトと考えられるかも。信じるも信じないもあなた次第。オカルトの世界にようこそ。

ディアリテラシーなんてなかった時代

昭和を知らなお世代にとっては信じがたいことかもしれないが、70年代のオカルトブームは、メジャーメディアによってけん引されたもので、特にテレビメディアの影響力はすさまじいものがあった。当時、メディアリテラシーなんてなかったし、フィクションとノンフィクションの区別もなくファンタジーとリアルは未分化のままテレビで報じられる情報を必死に受け止めていた。そこでは、幻想と現実が一体となって、僕らの中に侵入してきたのだ。

確かに当時のテレビは今と違いツチノコを探す番組が普通に成立してしまったり、ユリ・ゲラーのスプーン曲げをお茶の間と一緒にテレパシーを送り実践したりしたのを覚えている。「次の日スプーン曲がった」という子がクラスの中で人気者になったりした覚えがある。僕がそれを見たのは初来日からだいぶ経った後のことだったが、鮮明に覚えている。現在ではマジックでスプーンを曲げたりする輩はどこにでもいるので新鮮感はないだろうが当時は凄かった。

駆け足で日本のオカルトブームを一望

1973年に発売された五島勉『ノストラダムスの大予言』(祥伝社)の大ヒットに始まり、翌年のユリ・ゲラー来日による超能力ブームの到来、海外オカルトの王道であるネッシー、UFO、宇宙人のブームがそれに続き、同時に日本古来のオカルトである心霊が復興し、79年のオカルト専門誌『ムー』(学研)の創刊までがいわゆる社会現象というべき大きな流れといえる。

特に心霊については、小学校時代、心霊写真を特集した記事が雑誌に踊り、華厳の滝の写真に人の顔が写っているものや何かが出回っていたり、コックリさんに興じるクラスメイトがいたりと学校でも一大ブームとなっていた。ナチスの残党が秘密裏にUFOを開発し飛行実験しているなんて噂も飛びかった。ゼロ年代にはいると、江原啓之がテレビで人気となりスピリチュアルという名のオカルトブームを再来させる。また現代では、インターネットの普及とともに、オカルトは都市伝説や陰謀論と名前を変え現代ヘと血統を繋いでいる。

ネッシー捜索隊から深海生物へ

UMAではネッシーをはじめとしイエティ、ツチノコなど数々の生物の目撃情報や写真が出回っては消えしている中、深海巨大生物に関心が移っていく、ダイオウイカなどは現在では捕獲され岸に上がってきたり、深海で泳ぐ姿を高感度カメラで撮影されたりと、実在する生物として注目を集めるようになっていく。巨大生物ではないが、深海には奇妙な発光生物も多種おり、その発光のメカニズムと発光を何かの信号と捉え研究する研究者もいる。そして海底にとどまりほとんど動かず、餌もあまり食べない事で知られるようになったダイオウグソクムシなども少し前ブームになった。深海ではまだまだわかっていない事が多く、潜るたびに新たな発見があると研究者は目を光らせていたのが印象的だった。

『エクソシスト』のサブリミナル効果

1975年9月からは、2人の神父がキリスト教から正式な許可を得て悪魔払いを行っていた。そこから映画『エクソシスト』のブームが起こり、日本の民放で放映されたりもした。子供ながらにとりつかれた少女が口から粘着質の液体を吐くシーンは鮮明に覚えていて、しばらくトラウマになったぐらいだ。この映画はさらなる恐怖を煽るため、通常のシーンに数コマ単位で恐怖映像を挿入することで、恐怖の感覚を強く印象付ける工夫、いわゆるサブリミナル効果を使用したことでも知られている。

日本沈没と失われた大陸

『日本沈没』は地殻の変動によって、地震、津波、火山噴火、地盤沈下が起こり、日本が沈没してしまうというパニック映画だが、「何もせんほうがええ」というせりふに象徴されるように、日本人は日本列島という土着の地を失っては、アイデンティティーを保つことができないといった様子が描かれている。ガラパゴス化した島国で必死に世界と渡り合おうとしている日本人の行き着く果てがこれかと感じた。一方、失われた大陸といった点ではムーやアトランティス、レムリアといった謎の大陸伝説が有名だが、戦後に潜水艦や磁気計が発達して海底探査が進み大陸移動説が加賀kぅ的に証明されたことで大陸伝説はアカデミックな世界からは遠のいていく。過去に文明があり巨大な遺構を残したという点ではナスカの地上絵などもあるが、未だに何のために作られたのか謎が多いため人々も心を揺さぶる要素となっている。

最後にソストラダムスの大予言についてもページを割いており、終末論に人々が踊らされてきた歴史を垣間見ることができる。アラフォーおじさんにとっては懐かしく思える記述満載の書籍でした。